アパグループ創業者が長男に託した経営のバトン 元谷外志雄氏が会長、長男の一志氏はCEOに

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――以前(2020年2月)、東洋経済の取材で、会長は「借金は2000億~3000億円、資産は1兆3000億円以上ある」と述べていました。現状の財務はいかがですか。出店の際の資金はどう調達しているのでしょうか。

以前会長が言われた数字を少し上回る推移で動いている。資産価値は時代によって変わっていくので何とも言えないが。

出店は借り入れをするケースもあれば、自己資金でやるケースもある。償却が終わって何も抵当権がついていない状態の資産も増えており、新しく担保をつけて出店ということもあると思う。今は、我々のビジネスモデルが非常に評価されていて、各金融機関ももろ手を挙げてぜひアパに、というのが実情です。

元谷一志(もとや・いっし)/1971年生まれ。1995年学習院大学経済学部卒業後、住友銀行で5年間勤務。1999年にアパホテル常務取締役として入社。2012年にアパグループ代表取締役社長就任、2022年4月から社長兼CEO(撮影:尾形文繁)

――ポイント還元、キャッシュバックもある会員システムを集客の強みとしてきました。今後の顧客開拓の考え方と、インバウンドをどう獲得していきますか?

現在の会員数は2000万人を超えている。還元率は最大15%で、キャッシュバックできることも非常に大きい。会員制度はよりヘビーユーザーにお得で、使いやすいように刷新している。ライトユーザーにもカレーを差し上げるなど、1年に1回しか使わない方でも、その1回を確実に選んで頂くようにしたい。

コロナ前、インバウンドは3割を占めていた。火、水、木をメインとしたビジネス需要と、週末に偏る観光需要に対して、インバウンドは曜日に関係なく、薄く利用されていた。これがバームクーヘンのように層が厚くなっていく。将来的には弊社も、外国のお客様が中心になっていくと思う。

日本は清潔で気候も温暖で、食事も美味しい。観光資源に恵まれている。プラス円安ということで割安感もある。つい余計な買い物もすることになる。ホテルは外需を取り込めて、外貨を獲得できる点は明るい。2025年には大阪・関西万博を控える。6カ月間にわたって行われるので、多くの外国のお客様に来て頂けるだろう。

アパホテルは実験室、タブーはない

――コロナ後のホテル業界の競争環境について、どう考えていますか?

ますます優勝劣敗が進む。お客様の要求基準も上がる中で、弊社もどうあるべきか問われる。コンパクトな客室の中でどう快適な空間を提供できるか。平均滞在時間は10時間と長いので、限られたスペースでも快適に過ごせなければならない。

例えば1カ所で部屋のすべての照明を消せる「グッドナイトスイッチ」を採用していく。タイマーと連動して、時間になると照明やテレビの電源が付いて起きられるとか。そうした工夫もやっていきたい。

業界ではツインルーム同士の客室のコネクトルームが主流だが、今後はシングルルーム同士のコネクトを増やす。プライベートが確保されたツインのようなものだ。

お互い同意するとドアが開く仕組みで、トイレ、風呂、化粧の渋滞がなく使える。テレビのチャンネル権争いもない。静穏性を保つドアを開発できたので、いびきをかいても大丈夫だ。家族や友人のレジャー利用や、親子の受験の見守りなどで利用できる。

普段の平日はシングルで販売して、週末はコネクトで売ればツイン以上の単価で販売できる。ドアを2枚入れるだけなので、既存店も改装していく。

業界はかくあるべしという古い体質が強すぎて、そこに警鐘を鳴らしてきた。私はアパホテルをラボ(実験室)だと思っているので、タブーはないんです。結果が出れば他社も真似してくるだろうが、その時にはわれわれは先に行っている。そんな会社でありたいと思っている。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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