アパグループ創業者が長男に託した経営のバトン 元谷外志雄氏が会長、長男の一志氏はCEOに

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――会長夫人の元谷芙美子氏は、ホテル運営会社であるアパホテルの社長を続投します。

ブランド形成の過程で、ゼロを1にする効果として絶大な貢献があった。1994年に就任し「私が社長です」と新聞広告を出した。当時、社長が自ら広告塔になって前面に出るのは非常に珍しかった。

ホテル運営会社「アパホテル」は元谷芙美子氏が社長を続投する。長男の一志氏も「グループの象徴そのもの」と語る(撮影:尾形文繁)

批判もあったと思うが、社長が直接訴えかけたことで、その他大勢のホテルではなく「アパホテル」として周知された瞬間だった。見知らぬ土地に泊まるときにも、アパホテルが知られていることは大きい。

いろいろなメディアに登場して、アパホテル=社長のイメージがついている。グループの中でも象徴そのものだ。だから、余人をもって代えがたい。

ただし、当然のことながら人間には寿命がある。今は発表する時期ではないが、備えて考えていくことは大事だ。私はCEOとして、あらゆることを想定外から想定内に変えていくことが役目だと思っている。あたふたしていたら、従業員も安心できない。

上意下達ではなく、均等に情報が伝わる形に

――会長は「独断でできる経営のほうが効率はいい」と言及していました。組織的な経営にどうシフトしますか。

創業経営者なら、ピラミッド型の組織で、上意下達で熱を浸透させていく形はよいと思う。平成までの組織はそれでよかった。

今はZ世代も入社し、社員は18歳から65歳までいる。初代と比べて経営者の「カリスマ」も醸成されていない。だから、私は上に君臨するより、三角形の中心から熱を伝えて、従業員に均等に情報が伝わるようにする形がよいと思っている。

新たにビジネスチャットのSlackを副支配人以上に導入した。現場の状況がかなりつぶさに、オンタイムでわかるようになってきた。また、私は結構、現地現物主義で、かなり全国を飛び回っている。発想は移動距離に比例する、ではないが、おそらく驚かれるぐらい行っている。

また、相手の目線に合わせて、深掘りできることを話すように心がけている。会って1分話せば人となりはわかる。そこでツボに合う話をすれば、相手も心を開いてくれる。そうすることで、社員が話しやすい環境を保てると思っている。

雑学は誰にも負けない。広く浅く知識があって、比較的、地理と歴史は明るい。全国展開する企業でも、地場のしがらみはある。そこで雑学が身を助けてきた機会は多い。三重県桑名市出身の社員を面接したときには「焼きハマグリが名物だけど、シジミもよくとれるよね」とか。これは漫画「美味しんぼ」で書いてあったことを覚えていたんです(笑)。

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