アパグループ創業者が長男に託した経営のバトン 元谷外志雄氏が会長、長男の一志氏はCEOに

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――コロナ禍の初期、療養施設として真っ先に手を上げました。ホテル事業を下支えする結果にもなっています。

政府から会長に直接要請があり、会長が即決した。社会インフラの1つとして、側面から医療崩壊を防ぐ手助けをしなくてはならないと。もし私たちが手を挙げなかったら死傷者が出て、国家の大きな損失になる可能性があった。

安全対策においてはエリアを分けるなどで接触、飛沫感染の対策をやってきた。対応するスタッフは社内から挙手制で、手当てをつけてやってもらった。非接触型のチェックイン機の導入や自動チェックアウトの仕組みなど、接触を避ける投資をしてきた背景もある。

グループで51年連続黒字は「金字塔」

――コロナが直撃した2020年11月期も、グループで9.4億円の最終黒字を確保しています。ホテルの赤字をほかで補った形ですか?

高水準だった前年度の211億円から強烈な打撃を受けた形だった。その時は所有していたマンションを売ることで特別利益を捻出し、なんとかギリギリ黒字を出したという状況だった。

創業者が2021年11月期までグループで51期連続黒字を続けてきたことは金字塔だと思っている。私はこれを1年ずつ伸ばして、早期に、安定的に利益がでるようにしていきたい。

――近年は都内を中心に、自社で土地・建物を所有して出店する形を重視してきました。2027年に部屋数15万室(現在10.5万)を目指す中、今後重視する出店エリアは?

店舗の土地と建物はほぼ自社で所有している。賃貸方式のようにオーナーに賃料を払う必要がなく、安定的な経営ができる。直営なら改装、メンテナンスもすぐにできる。デメリットは初期投資が重いことだ。賃貸方式や(委託料を受け取って運営する)運営受託方式と比べると、まだまだ展開スピードは遅いと思っている。

先ほど言ったように、あらゆることを想定内に変えていく。首都直下型地震や富士山の噴火など、大規模な災害が起きたから倒産しましたでは済まされない。リスクヘッジも必要だ。東京、大阪、名古屋、政令指定都市を強みにした店舗網を考えている。

ただ、国内の人口が減る中、ダントツの日本一だからいいというわけではない。最高益を出している企業は皆海外で展開している。今は世界で19番目のホテルチェーン。海外の割合を高めることも必須だ。

北米では「コーストホテル」を40店舗展開している。南下政策を進めて、シアトルやサンフランシスコ、ロサンザルス、サンディエゴなど、海岸沿いの大都市で直営店舗を増やす。日本とまったく同じではないが、コンパクトで高機能な客室は、世界の大都市圏でも威力を発揮する。日本製の客室が世界を席巻する可能性は十分に高い。

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