「政治的暴力」が多発、脅威が増大するアメリカ テロは国外から国内へ、3つの要因が引き金に

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1960年代から70年代は、ベトナム戦争をはじめ社会問題の解決を訴えるウェザーアンダーグラウンドなど極左組織が政治的暴力で社会を震撼させた。

だが、半世紀前と今日が異なるのは、左翼から右翼に脅威がシフトした以外に、Qアノンをはじめ陰謀説が大きな影響を及ぼしていることだ。半世紀前であれば、多くの国民が同じテレビニュースを視聴し、それに基づき異なる捉え方をしていたのが、現在はそもそも見ているニュースが人によって異なり、その段階で事実とかけ離れた情報の場合もある。

第3の要因:異なる事実とソーシャルメディア

トランプ前政権が与えた影響も大きい。事実を歪める政権の姿勢は、2017年のトランプ前大統領の就任日から始まった。当時、就任式を巡り、トランプ前政権は過去最高の参加者数であると、明らかに事実と異なることを主張。ケリーアン・コンウェイ大統領顧問はこれが虚偽発言であると追及されて、「もう1つの事実」(alternative facts)と述べた。

今日の共和党はこの「もう1つの事実」の世界を信じる有権者が多い。直近では2020年大統領選結果について、バイデン大統領は正当に当選しなかったと考える共和党支持者が71%にも上ることも、その現象といえよう(マサチューセッツ大学アムハースト校、2021年12月14~20日調査)。

2021年、ランド研究所は「真実の腐敗(Truth Decay)」と題する研究を発表し、マイケル・リッチ所長は事実と作り話の境界線があいまいとなっていることが民主主義の基盤を脅かしていると主張している。

マサチューセッツ工科大学(MIT)が行った研究によると、誤情報は真新しい情報であることからも、人間の本能で反応し、通常の情報よりも拡散するスピードが速いという。政府不信や反エスタブリッシュメント感情は政治家に加え、ケーブルテレビ、SNSによって拡散。真実の腐敗は社会の二極化を深め、政治的暴力の地盤を築いている。

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