「政治的暴力」が多発、脅威が増大するアメリカ テロは国外から国内へ、3つの要因が引き金に

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

政治的暴力の拡大にはさまざまな要因が考えられるが、特に(1)社会の急激な変化に対する抵抗、(2)異なる民族間の対立を煽る「民族アントレプレナー」の動きが一般国民にまで拡大、(3)ソーシャルメディアと事実の歪みの3点の主因が挙げられる。

第1の要因:社会の急激な変化に対する抵抗

歴史的にアメリカでは政治的暴力が繰り返されてきた。1968年の公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師およびジョン・F・ケネディ(JFK)大統領の弟ロバート・F・ケネディ(RFK)司法長官の暗殺後、リンドン・ジョンソン大統領は国家暴力原因予防委員会を設置した。

同委員会の報告書は大きな社会変化の際、政治的暴力が拡大することを指摘している。社会変化について脅威を抱く国民の一部は、政治がその変化を止める役割を担っていない、あるいは政治が過度に変革を推し進めていることに不満を抱き、それを阻止するには暴力しか残されていない、と考えて自らの行為を正当化しているという。1960年代は公民権運動や女性解放運動に伴い政治が左に大きく振れた時期であり、その時代の変化に反発する暴力行為が見られた。

半世紀が経過した今のアメリカも大きな社会変革期を迎えている。グローバル化の進展、女性の社会進出の拡大、性的マイノリティーに寛容な政策導入などアメリカ社会はリベラルな方向に進んでいる。

社会変化の中でも特に一部白人の間で大きな反発が見られるのが社会におけるマイノリティーの影響拡大だ。

2008年、オバマ大統領の当選でアメリカ史上初の黒人大統領が誕生したことを受け、保守派が小さな政府を掲げてティーパーティー(茶会党)運動をもたらした。だが、その後、トランプ政権下では多くの保守派が大きな政府を黙認したことからも、ティーパーティー運動の原動力は小さな政府の推進ではなく反政府感情で、そしてその根底には黒人大統領に反発する白人至上主義の思想が影響していたことが明らかとなっている。議会乱入事件で中心的役割を担ったオースキーパーズ、プラウドボーイズなど極右団体もオバマ政権時代に発足した。

次ページトランプ前大統領の誕生で表舞台に
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事