学校で「いい先生」が正規教員になれない理不尽 現場の評価と一致しない採用試験の評価

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しかし、臨時的任用教員としてフルタイムで働きながら受験する人の場合、対策の時間を取りづらい。そうした状況がある中で、試験対策の時間を十分取れる大学生と肩を並べて毎回試験に挑まなければならない

武田さんも1~2年目は仕事を覚えるのに手いっぱいで、試験対策をほとんどすることができなかった。その結果、あえなく1次試験の壁に阻まれることとなった。

3年目に初めて1次を突破した武田さんは、2次試験の面接・論文に向けて、万全を期そうと思った。だがその矢先、部活動関連の仕事が次々と入り、2次の前日には大会のリハーサルで、ほぼ終日拘束されてしまった。その結果、十分な準備もできないまま本番に臨み、不合格となってしまった。

「断ったら二度と講師はできない」

教員は、部活動の顧問の仕事をボランティアに近い状態で担っている。大事な採用試験を前に、そうした仕事を断ることはできなかったのか。

「仕事をきちんとやらないと、講師(臨時的任用教員)として働けなくなるという恐怖心がありました。だから、そんなことは言えませんでした」

当時をそうふり返る武田さんは、非正規教員1年目の終わりごろ、忘れられない経験をしている。当時、特別支援学校に勤務していたところ、近隣の高校の教頭から「来年度、うちの学校で講師をしないか」との電話が入った。武田先生が「少し考えさせてください」と答えると、その教頭はこう言った。

「この話を断ったら、二度とこの県で講師はできないと思え」

武田さんは、今もこの言葉が頭から離れない。そんな経験をすれば、「採用試験があるので、部活動の仕事は軽減してください」と言えなくなるのは当然であろう。

職場の優秀な人材を正規教員に登用する仕組みが存在せず、教員採用試験というやや特殊な選考システムにより、多くの教員が非正規雇用のまま放置され続けている。公教育の質の担保という点でも問題と言わざるをえない。

【東洋経済では教員の働き方に関するアンケートを実施しています】

→ご回答はこちらから

(第5回は「ベテラン教師が不合格になる採用試験の大疑問」)

佐藤明彦 教育ジャーナリスト

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さとうあきひこ

1972年滋賀県生まれ。東北大学教育学部卒。大手出版社勤務を経てフリー記者に。編集プロダクション・株式会社コンテクスト代表取締役。『月刊 教員養成セミナー』(時事通信社)前編集長。教育書の企画・編集に携わりながら、教育分野の専門誌などに記事を寄稿。著書に『職業としての教師』『教育委員会が本気出したらスゴかった。 』『非正規教員の研究 「使い捨てられる教師たち」の知られざる実態』(ともに時事通信社)など

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