フランスのマクロン大統領、議会選挙敗北の打撃 「革命」から「停滞」へ、国内外で発言力は低下へ

拡大
縮小

議会優位の前体制の統治能力喪失への反省から、1958年に始まった現在の政治体制(第五共和政)では大統領が議会に対して優越する。大統領は国民議会の解散権を持つが、国民議会は特別な事情がない限り、大統領を罷免することができない。

フランスでは国家の最高責任者である大統領のほかに、政府の長である首相が置かれ、前者が主に国防と外交を、後者が内政を担う双頭制を採る。大統領は首相の任命権を持つが、罷免権を持たない。国民議会は政府(首相)の不信任案を決議でき、首相は議会の多数派に対して責任を負う。

多くの場合、大統領の出身政党と議会の多数派が一致するため、大統領と議会(首相)の間で対立が表面化することはない。だが、1980年代と90年代には、大統領の出身政党と議会の多数派が食い違う「コアビタシオン(ねじれ)」が発生し、大統領は政策の軌道修正を余儀なくされた。今回はいずれの勢力も議会の過半数を確保できず、コアビタシオンではないが、法案成立が困難となり、政策停滞が懸念される。

ミッテラン時代は法案審議に難渋

第五共和政下で今回と似たような選挙結果となったことが一度だけある。1988年の大統領選挙で再選を果たした社会党のミッテラン大統領は、コアビタシオン解消を目指して国民議会を解散したが、議会の過半数確保に失敗した。ミッテラン大統領は同じ社会党内で中道派のロカール氏を首相に任命。ロカール首相は中道右派政党に閣僚ポストを提供し、政権支持を呼びかけたが、ほんの一握りの議員が大統領支持に転身するにとどまった。

そのため、法案ごとに野党議員に協力を求め、何とか法案を成立させた。野党は内閣不信任動議を繰り返し提出し、政府は憲法第49条3項に基づく審議打ち切り(事実上の強行採決)でこれに対抗した。ロカール首相が在任した3年間で、審議打ち切りの利用は30回近くに上り、これは歴代政権で突出して多い。

次ページ過半数割れで、議会対策をどうするのか
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT