ジェイコムが宿敵の動画サービスと手を組む事情 ネットフリックスに続きディズニーとも提携

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ライバルといえるケーブルテレビと動画配信が提携。背景にはケーブルテレビ側の「開き直り」がある(撮影:梅谷秀司)

水と油の関係に見える動画配信とケーブルテレビが、またもや手を結んだ――。

2022年3月に発表されたのがケーブルテレビ大手・J:COM(ジェイコム)とウォルト・ディズニー・ジャパンのパートナーシップ拡大だ。ジェイコム加入者が動画配信サービス「ディズニープラス」に加入する際、その月額費の支払いをジェイコムに一本化できるなどの取り組みを実施する。

これまでジェイコムとディズニーは、ケーブルテレビにおけるディズニー作品の展開で関係を築いてきたものの、動画配信サービスに関する連携は初めてだ。今回の契約に関する詳細は非開示だが、ジェイコム経由で契約したユーザーの一部会費をレベニューシェアしていると見られる。

ジェイコムはすでに、大手動画配信サービス・ネットフリックスとも提携を結んでおり、同社にとっては2社目の動画配信サービスのパートナーになる。さらに、ネットフリックスとはケーブルテレビとセットになったプランも販売しており、今後ディズニープラスともそういった取り組みが想定される。

ジェイコムならではの「開き直り」

ジェイコムの主力サービスであるケーブルテレビと動画配信サービスは、ともに映画やドラマ、アニメの放送・配信を行っており、潜在的には競合関係に当たる。さらに、アメリカでは、ネットフリックスの台頭によりケーブルテレビの契約が解除され、「コード・カッティング(動画配信へ乗り換えることの意)」という言葉まで誕生した。

一見すると、相容れないように見える両者だが、ジェイコムの氏本祐介常務は「(動画配信との)敵対意識は過去のものだ」と明言する。ここにはある種の「開き直り」が存在する。

外資系動画配信はオリジナル番組の製作や独占作品の獲得に巨費を投じており、ケーブルテレビ事業が作品数や事業規模で大きく劣ることは必至だ。そのため「テレビの解約は仕方がないが、タダで動画配信に乗り換えられるのはもったいない。であれば、連携してしまったほうがいい」(氏本常務)というのだ。

ジェイコムはケーブルテレビだけではなく、電話やネット回線、電力などあらゆるサービスを展開している。ケーブルテレビが解約されたとしても、今までは奪い取られるだけだった顧客を自社サービスに引き留め、別サービスとのタッチポイントを残せるというわけだ。

また、動画配信サービスをきっかけに加入した新会員への自社ケーブルテレビやネット回線の販促、動画配信サービスをテレビで視聴できるようにするセット・トップ・ボックス(STB)と呼ばれる機器のレンタルなど、顧客の引き留めにとどまらない効果も期待できる。

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