出井伸之氏が「今のソニー」に残した置き土産 デジタルシフトを予見も「あまりにも早すぎた」
もっとも、出井氏がまいた種は今のソニーで花開いている。現在の吉田憲一郎社長は、1998年から2000年まで社長室の室長を務め、出井氏の薫陶を受けた。その後、出井氏が設立したインターネットサービス子会社・ソネットエンタテインメントで社長になり、インターネットを利用したビジネスへの理解を深めた。
吉田社長は、出井氏死去に関するソニーのプレスリリース内で「(社長室室長の)経験と学びは、自分の人生の転機ともなり、現在のソニーの経営にもつながっています」とコメントした。
CFO(最高財務責任者)として吉田社長を支える十時裕樹副社長も、出井CEO時代の2001年に設立されたソニー銀行で代表を務めている。2010年代半ばにソニーの業績をV字回復させた平井一夫前社長も、出井氏が注力したゲーム事業子会社のアメリカ事業でリーダーとしての経験を積んでいる。
在任中の数字だけでは評価できない
「イノベーションはコア(中核部門)で起きず、辺境から起きる」。経営学を教える長内教授はこうも語る。吉田、十時、平井の各氏がいずれも、ソニー本体からは遠い事業でマネジメントを学び、本体に戻って業績を立て直し、拡大させているのは偶然ではないだろう。
2010年代に入り、日本の電機産業の競争力低下が決定的になったとき、ソニーにはゲームをはじめ音楽、映画といったエンタメがあった。これを武器に方向転換に成功したのが平井前社長、それを引き継ぎ幹を太くしたのが吉田現社長と位置づけることができる。
経営者には結果責任が伴う。在任期間中の業績で評価されるのは仕方のないことだ。ただ出井氏は、当時の数字だけでは測れない未来への功績を残した稀有なリーダーだったといえる。
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