「メタバース」は暗号資産の救世主になりうるか デジタル化と相反するブロックチェーンの課題

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暗号資産(仮想通貨)の課題と、可能性とはどういったものなのでしょうか(写真:metamorworks/PIXTA)
ブロックチェーン技術を使って急速に拡大する暗号資産(仮想通貨)だが、中央集権型のデジタル化とは相容れないなど、多くの課題が見えてきた。この先、暗号資産(仮想通貨)に活路はあるのか。『決済インフラ入門【2025年版】』等の著書があり、金融行政にも詳しい宿輪純一氏が、暗号資産(仮想通貨)の課題と可能性について解説する。

デジタル化が進む社会

日本でも「デジタル化」(DX:Digital Transformation)が、政策として政府主導で推進されている。その司令塔として「デジタル庁」(Digital Agency)を昨年9月に発足させ、積極的な活動をしている。

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政府の中でも各省庁でもデジタル化を推進していた。まさにデジタル化の仕組み同様、中央集権的な決定部署が必要となっていた。まさに日本最高レベルの調整が進められている。

Digitalとは、もともとは人の「手のひら」のことである。指が10本あり、人類はその指を使って数えた。そこから、様々な現象をデータ化(数値化)して、それを活用することをデジタルと言った。そのようにデータを経営・組織的に活用するということは、中央集権的にデータを集めて、“迅速に、確実な決定”を促すものである。

企業や政府などの組織において、ボトムからトップへの「ピラミッド型」の組織は、決定をするときに必然的な形態である。その組織で情報(データ)を伝えるときに、以前は「紙」で上げられていた。

「ペーパーレス」(Paperless)の意識は1970年代からの自然保護、すなわち森林保護と同時に始まった。そのように、資源の削減(自然保護)を目的として、紙をなくすこと、「ペーパーレス」が進んだ。当初はPDFのようにそのまま読み込んでいたが、後に、紙の中にある数字などの「データ」を活用するようになった。

そのピラミッド型の組織は、情報の伝達が紙からデータに移行するのと同時期に、情報伝達が早く出来るようになり、中間層を省き出し、ピラミッドの高さが低くなっていった。また、同様に、個々がピラミッドのように“上部機関”を持たず、分散したままで決定を下し動いていくことになっていく。

個々がある程度の塊(ブロック)となって、接続されていく形態で、それを支えるのが「ブロックチェーン技術」である。そのまま、ブロックチェーン技術をベースとして、“分散型”で行われる金融の仕組みが、金融機関を介さず利用者同士が直接金融を行う「DeFi」(Decentralized Finance:分散型金融)である。組織とすれば、管理者不在の「DAO」(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)となる。

このようなデータを“特定の利用者”に集めないで行われる分散型ウェブサービスは「スマートコントラクト」とも言われている。

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