大人が今の若者を嘆くのは、呪いに侵されてるから 古い悪習は引き継がず、自分の代で断ち切るべき

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ある友人は、結婚するまで「この人が家庭を持っても大丈夫なのだろうか」と周りが心配するようなタイプでした。ところが、子どもが生まれてからはとても穏やかで優しいパパになりました。こんなふうに、よいほうに変わっていく人もいます。

でも、悪いほうへ価値観を変えてしまう人もいます。例えば、年齢や環境がきっかけで自分が諦めたことを他人にも強要する人です。

「自分も諦めたのだから、あなたも諦めるべきだ」

「あなたが自分のように失敗するのが心配だから言っている」

もっともらしい忠告ですが、正直なところ、これってただの「呪い」です。まだ頑張っている人に、「どうせお前も失敗するから諦めろ」と言っているのですから。

私が一番言われたのは、「ある程度の年齢になったら夢は諦めるもの」という言葉でした。でも、もしその言葉を素直に聞いていたら、今の私はここにいないでしょう。

「今時の若者は……」で、今の若い人に古い価値観を押し付けてしまう人は、この呪いにかかっている可能性が高いです。

責任を背負い、若いときと気持ちが変わってしまった

ただ、そういう人も昔からそうだったわけではありません。自分が新人だったころは社内で理不尽な扱いを受けたり、年齢を理由に正当な評価がされなかったりして、「自分が偉くなったら、もっと若い人の意見も取り入れていきたい!」と思っていた時期もあるはずです。

でも、年をとっていろいろいろいろな責任を背負って、やっとのことで役職に就いたころには当時と気持ちが変わってしまった。

「自分も昔は上司に逆らえなくて、苦労した末にやっとこの立場になったのだから、部下も自分と同じように上司の自分に従うべきだ」って。

そして、その部下はまた同じように未来の部下に同じことを繰り返したり、反面教師であらがって、見切りをつけて転職したりするわけです。

「呪い」と言った理由は、「自分と同じ苦労を部下にも……」を引き継いでしまう人の大半が、本心からそうは思っていないことが多いからです。

ずっとそのやり方で何十年も働いてきて、周りもそれを当たり前と思っている環境では、ルールを壊すのはとても難しいし、余計なことをすれば今の立場を失うかもしれません。だから、なかなか呪いを振り払うことができないのです。

それでも、時代に合わせて変わっていく職場はあるし、若い人たちの多くは変化を望んでいます。呪いを次世代に引き継ごうとする上司と、自分の代で断ち切ってくれる上司、どちらが部下から尊敬されるでしょうか。

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