アサヒビール流グローバル人材育成術、語学よりも実務力を重視
「英語などの語学力だけですべてを判断することはしない。私たちが重視するのは、高い実務能力などを身に付けているかどうかだ」
アサヒビール人事部チーフプロデューサーの三浦一郎氏は、海外に送り出す社員を選ぶ際の基準を語る。すでに1990年代前半から、ドイツ・アメリカの大学などに技術者を留学させたり、海外での現地法人・出資先企業に社員を派遣してきたが、ここ数年はその動きを一段と加速させている。
アサヒビールは現在、キリンビールやサントリーなどと国内市場でのシェア獲得で激しい競争をしつつ、海外進出のスピードも競い合っている。そのような熾烈な競争を意識し、2010年に経営計画「長期ビジョン2015」を発表した。15年には売上高で2兆~2.5兆円を達成し、世界の食品企業トップ10入りを目指すものだ。
これを達成するために、売り上げに占める海外での構成比を現在の5%前後から15年には20~30%に上げることを目標としている。
求めるのは、T字型の人材
そこで人事部が昨年春から始めたのが、社内で“海外武者修行”と呼ばれる、「グローバル・チャレンジャーズ・プログラム(GCP)」である。
人事部・国際部などが作る一定の基準の下、選考が行われ、それを突破した社員が海外の提携先企業に行く。そこで現地での事業運営に必要な経営の基礎知識を身に付けることなどを狙いとしている。
全社員を対象にした社内公募が行われ、昨年5月末までに122人がエントリーした。その多くが、20~40代前半までの社員だった。それを人事部などで選考し、20人にした。さらに2回の集合研修で10人に絞り込んだ。この研修では、海外で実務を進めたり、マネジメントができる素養や、マーケティングを中心とした事業戦略を作る力などを確認した。
そのうえで選ばれた10人が秋から海外(中国、韓国、オーストラリアなど7カ国)に半年間ほどの予定で順次、送り込まれた。