アサヒビール流グローバル人材育成術、語学よりも実務力を重視

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 その問いを投げかけると、三浦氏は「それはない」としたうえで、「20代の頃からの評価の蓄積は当然あるが、海外要員を選ぶに当たっては、直近数年の評価・仕事に関する上司の推薦内容に重きを置いた」と答えた。

グローバル化=英語力の養成とは考えない

選考をパスした10人は海外に赴任し、3カ月を終えた時点で、人事部への報告を行った。
 
 それによると、それぞれが語学学校に通いながら、たとえば商店街などに出向き、現地の人と接してヒアリングを行い、その国に適したビジネスプランを立案しているという。人事部としても、このように肌で現地の人たちの嗜好などを感じ取ることを奨励している。

この10人は今年の春から夏にかけて帰国するが、その後の人事の扱いは現時点では決まっていないという。また、昇格をさせるということはないようだ。
 
 「当然、今回の経験は今後に生かしてもらいたいし、人事部としてもその支援は積極的にしていく。だが、人事面での処遇だけを求めて海外に行く社員を選抜しようとは考えていない」(三浦氏)。

人事部はこのペースで海外要員を選抜、育成し、近い将来に100人ほどは確保したいとしている。これらの人材は、いずれは現地のマネジメント層になることなどが期待されている。

一部の大企業では、30代の社員を課長など管理職に抜擢する早期選抜が進むが、今回のセレクトはそれとは直接は関係がない、という。すでに同社では30代前半で、課長に当たるプロデューサー職になっている社員がいる。

人事部としてはこの「早期選抜」と、今回の海外要員のセレクトをあえて絡める必要はない、と判断しているのだろう。むしろ、社員の適性をより厳密に見極めて配置していく「人材ポートフォリオ」を徹底させようとしているようだ。

「私たちは、“国内・海外”というくくりで社員を分けようとは考えていない。むしろ、グループ全体という位置づけでとらえている。その中で社員たちがさまざまな部署で貴重な経験を積み、自分の持ち味を活かすことができるようになってほしい」(三浦氏)。

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