リビア問題は当面は日本国債の買い材料、金利押し下げ要因に《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》

みずほ証券
上野泰也・チーフマーケットエコノミスト

リビア問題は、時限性はあるにせよ、債券の買い材料だと考えている。

債券の買い材料としては、(1)交易条件悪化による景気下押し圧力、(2)地政学的リスクが意識される中での「質への逃避」(中短期債の購入需要増大)、(3)リスク回避志向による株式から債券への資金シフト、の3点がある。
 
 一方、債券の売り材料としては、(1)エネルギー関連の価格上昇によってコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)の前年同月比に押し上げ圧力が加わること、(2)そのために、日銀の超低金利政策の「時間軸」が短縮するのではないかという連想が働くこと、の2点を一応挙げることができる。

しかし、私は、原油価格上昇でインフレだから長期金利上昇、という見方は短絡的で誤りだと考えている。2011年は各国の金融政策にズレが生じている年だということを理解しなければならない。

英国はインフレ目標を導入している国でもあり、信認を維持するためにも、利上げ志向だ。だからポンドは買われている。ECB(欧州中央銀行)は、従来から、CPI(消費者物価指数)についてコアではなく、食料やエネルギーの価格を含めて見る立場だ。同様にインフレリスクを警戒し、利上げの方向にある。利上げの時期については、当初、今年10~12月とみていたが、7~9月に早まる可能性が高まった。

一方、米FRB(連邦準備制度理事会)は最大雇用と物価安定の2つの使命をもっている。物価だけでなく、景気への目配りを常にしている。CPIについてはコア(食料およびエネルギーを除く)重視の姿勢だ。エネルギー価格の高騰という材料についても、物価を押し上げる面と、それが消費マインドを冷やす、企業の業績を悪化させるという景気への下押し圧力の面との両方をバランスよく消化するだろう。量的緩和の姿勢を変更するわけにはいかない。

さらに、日本はデフレであるので、日本銀行は、景気への配慮をより強く意識している。2月23日の山口広秀副総裁の講演でも景気と物価両面への影響について言及している。したがって、「時間軸」が短縮されると単純に考えるのは、誤りである可能性が高い。

欧州でも、中短期債はどんどん売られているが、ドイツの長期国債は買われている。これはインフレ抑制となれば、イールドカーブはフラット化すると見るからだ。日米の国債にとって、リビア問題は買い材料であり長期金利の押し下げ要因になるとみてよい。
(大崎 明子 =東洋経済オンライン)
photo:Ted CC BY-SA 2.0

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