「明日へのマーチ」に映る桑田佳祐の超バランス感 震災復興へシャイで押しつけがましくないスタンス

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「明日へのマーチ」と宮城県女川町の関係は深い(写真:Blue flash/PIXTA)
「胸さわぎの腰つき」の衝撃から44年。以来ずっと桑田佳祐は自由に曲を書き、歌ってきた。サザンとソロの全作品のうち、26作の歌詞を徹底分析したスージー鈴木氏の新著『桑田佳祐論』から一部抜粋、再構成してお届けする。(文中敬称略)
桑田佳祐《明日へのマーチ》《Let's try again》《ハダカDE音頭~祭りだ!!Naked~》
作詞:桑田佳祐、作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐
シングル、2011年8月17日

「明日へのマーチ」
「Letʼs try again」
「ハダカDE音頭~祭りだ‼Naked~」

上に並べたのは、歌詞ではなく、2011年の8月に発売されたトリプルA面(!)シングルの曲順である。今回は、この3曲が1枚のシングルに入っている意味を考察してみたいと思う。

東日本大震災の5カ月後に発売されたシングル。このシングルと初回完全生産限定盤特典の「明日へのレインボータオル」から得られる収益の一部は、東日本大震災からの復興支援活動等の資金として、日本赤十字社および地方公共団体に対して寄付されるという前提で発売されたもの。

という「真面目」な目論見のシングルなのだが、こういうときにこそ発動するのが、桑田佳祐のバランス感覚である。

まず、「真面目」な目論見をど真ん中で体現するのが、2曲目の《Letʼs try again》だ。このシングルでの正式タイトルは《Letʼs try again ~kuwata keisuke ver.~》。

意味合いとしては、この曲、桑田佳祐も所属する芸能事務所――アミューズの音楽家/タレント/俳優たちで構成された「チーム・アミューズ‼」名義で、同年5月に発売された曲の、桑田本人によるセルフカバーだということ。

「♪ニッポンの元気な未来へ みんなで立ち上がれ Letʼs try again ! !」と歌うのだから、東日本大震災後に、日本を席巻した「がんばろうニッポン」的なメッセージを、かなり直截的に表現したものになっている。そういう意味では、桑田佳祐っぽくないような気がするが、当時のあの切迫した空気や様々な事情が、たとえ桑田佳祐といえども、こういう歌詞に至らせたのだろう。

次ページ直截ながら全体の印象を中和
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