ビットコイン「実質支配していた人たち」の正体 「少数支配の実態」が科学研究で明らかに

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研究者たちの間では以前から、ビットコインが本当に分散型の通貨なのか疑問視する声が上がっていた。リーバーマン・エイデンは、キーとなる採掘者の数は「実際はもっと少なかった」とみている。

分析では調査対象となった2年間のキープレーヤーは64人という結果となっているが、同時に活動状態にあったプレーヤーの数を割り出すと、その数は5〜6人になるという。そして多くの場合は、1〜2人がマイニングパワーのほとんどを独占していた。

ブラックバーンの言葉を借りると、ごく少数の「王冠をかぶった」人々がネットワークの裁定者となっていたわけで、「分散型でトラストレスという、仮想通貨のエトス(精神)とは相いれない」。

詐欺で有罪判決を受けた人物も

もちろん、今回の研究は、個人名をさらすことが目的となっているわけではない。ビットコイン犯罪の摘発は、連邦捜査局(FBI)と内国歳入庁(IRS)の仕事だ。とはいえ、ブラックバーンらが正体を突き止めたキープレーヤーの中には、一般にビットコイン犯罪者として知られる人物も含まれていた。

例えば、エージェント19番の正体はマイケル・マンシル・ブラウンで、またの名を「ドクター・イーヴル(悪の博士)」という。当時大統領候補だったミット・ロムニーを巻き込む詐欺および恐喝で2012年に有罪判決を受けた人物だ。

エージェント67番は、シルクロードの生みの親で「恐怖の海賊ロバーツ」としても知られるロス・ウルブリヒトと結びついている。エージェント1番は、もちろんサトシ・ナカモトだが、ブラックバーンらはその正体の特定は試みていない。

ブラックバーンは、エージェントをリスト化した後、それぞれが採掘で得た収入も分析。その結果、ビットコイン立ち上げから数カ月間で、ごく一握りの採掘者がほとんどの富と権力を手にするという、ビットコインが約束する平等主義とはかけ離れた典型的な格差が生まれていたことが明らかになった。

(執筆:Siobhan Roberts記者)
(C)2022 The New York Times

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