コロナ禍に隠れた“準ひきこもり"の人々の実態 江戸川区7919人ひきこもりは氷山の一角に過ぎない

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もう1つの怖さは、そんな子どもに引っ張られるように外出の機会を減らしてしまう親がいること。「子どもを1人にして出かけられないから」とスーパーなどへの買い物も行けなくなり、「平日はまったく外に出なくなった」というのです。

また、「週末に子どもを外に連れて行っても喜ばれず、車から出ずにYouTubeを見ている」という声もありました。そうなるとますます外出の機会は減り、準ひきこもり状態の傾向が濃くなってしまいます。

準ひきこもりのうちに早期改善を

内閣府の調査では「ひきこもりは全国で115万人超」という推計もありますし、80代の親が無職50代の子どもを支える「8050問題」という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。

江戸川区の調査を見ても、ひきこもりには「早期に対応しなければ10年以上の長期にわたりやすい」というリスクがあることは間違いないでしょう。そんなリスクがあるからこそ、自分では「ひきこもりではない」「いつでも元に戻せる」などと思っている準ひきこもり状態のうちに改善しておきたいところです。

当事者たちも悪気があってひきこもりになった人はほとんどいないですし、「今日も家から出ずに1日が終わってしまった」と焦っている人や、「将来が不安でほとんど寝られない」と苦しんでいる人もいます。当事者や家族の中には、相談どころか人にうまく説明できずに悩みを抱え込んでいる人が少なくありません。

生きづらさを感じやすく、誰もが孤立化しやすい社会だけに、周囲の人々も「自業自得」と当事者や家族のせいにしたり、偏見の目で見たりすることは避けたいところ。もちろん当事者の努力は必要ですが、今回のような調査を続けながら、さまざまな形で手を差し伸べられる社会であってほしいと願っています。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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