アフリカ「残虐殺し屋軍団」とロシアのヤバい関係 ロシア傭兵会社ワグネル・グループの正体
過去10年にわたり武装勢力と戦闘を続けているマリは、フランス軍をはじめとするヨーロッパ各国の軍から支援を受けてきた。しかし、クーデターで昨年実権を掌握したマリ軍事政権との関係が悪化する中、フランスはマリから軍を撤収。そこに進出してきたのが、ロシアのワグネルだった。
ワグネルはロシアの工作員と企業のネットワークで、アメリカ財務省の言葉を借りれば、ロシア国防省の「代理部隊」として活動している。当局との関係を否認しながらロシアの外交政策の手先となって傭兵の使用や偽情報作戦を展開する組織、というのが軍事アナリストらの説明だ。
問題を抱えた政府や軍幹部に支援を提供
2014年にウクライナで姿を現して以降、ワグネルの工作員はリビアやシリアに加え、中央アフリカ共和国、モザンビーク、スーダン、マリといったサハラ砂漠以南のアフリカ諸国で活動してきたことが確認されている。
アフリカおよび西側のアナリスト、外交官、軍関係者ら数十人に対し、ここ数週間で行った取材によると、ワグネルは問題を抱えた政府や軍幹部に支援を提供。その見返りとして現金、もしくは金、ダイヤモンド、ウランといった収益性の高い鉱物採掘権を受け取る契約となっている。
マリ当局はモウラでの戦闘を、過激派に対する大きな勝利だと持ち上げた。当局は過激派戦闘員203人を殺害し、50人以上を拘束したと主張する一方で、民間の犠牲者については一言も言及していない。ワグネル工作員の存在も否定しており、ロシアとは「指導員」を提供してもらう契約を結んだだけだとしている。
ところが、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は5月、イタリアのテレビ番組で、ワグネルはマリに「ビジネス目的」で滞在し、「治安サービス」を提供していると語った。
目撃者やアナリストによると、モウラでの死者数は最大限控え目に見積もっても300〜400人に上る。その大半が民間人だ。
軍による人権侵害が繰り返されているマリだが、中でもモウラの死者数は最悪のものとなった。外交筋やマリの人権監視団体によると、1月にワグネルとの共同作戦が開始されて以降、マリ軍の人権侵害は増加の一途をたどっている。