広電が採用、ついに開始「大形連接車」の全扉乗降 最寄り扉での乗降が当たり前でない日本の現実
新型コロナウイルス禍で公共交通の利用者が減った。リモートワークが増え、通勤や出張の足の公共交通から自動車への切り替えも多い。マイカー利用も感染回避ならば後ろめたさはなく、マイカーの利便性が改めて発見されることにもなった。感染が終息しても利用者数回復は難しそうだ。
回復の条件は、MaaS(マイカー利用を減らすために、マイカーと同等かそれ以上の魅力的な交通サービスを提供し、サステナブルな社会を構築してゆく概念)の時代にふさわしい輸送サービスの提供、少なくとも今の生活テンポに合ったスピーディーでスムーズな乗り降りができることだ。
都市鉄道線や地下鉄線、新交通線は最寄りの扉で乗降できる「全扉乗降」だからいいとして、問題は、「乗降扉指定」の路面電車と閑散線区のワンマン列車だ。
乗客は1列になって運賃箱に現金か切符を投入、ICカードをタッチするから停車時間が長く、乗車扉から降車扉への車内移動が必須であり、ベビーカーを伴うときや高齢者には難儀だ。これでは、利便性、迅速性、快適性に欠けて乗る気が失せる。
広島電鉄の「全扉乗降サービス」
広島市内の路面電車と、それが直通する広島―宮島間の郊外線を擁する同社の主力車両は72編成の連接電車で、長さ18mの1000形(低床車。扉2つ、ワンマン運転。2018年からICカード限定の全扉乗降を実施)18編成、および、同30m級の3950形・5200形など(半数が低床車。扉4つ、ワンマンカー2両分の大形のため車掌が最後部扉に乗務。運賃収受はワンマンカーと同じ方式)54編成である。このほかに同12~14mのボギー車(扉2つ、乗降扉指定のワンマン運転)が約70両在籍する。
同社は今年3月8日、ホームページ上で、「『ICカード全扉乗降サービス』を連接車両(30m級)へ拡大します」の見出しで、「1000形車両において、ご自身でICカードをタッチして精算(セルフ精算)していただくことで、すべての扉から乗降できるサービスを実施しております。お客様からご好評をいただくと共に他の車両への拡大の要望も多くいただいていることから、今年3月から同サービスを連接車両に拡大します」と発表した。
今までは運転士と車掌のいる扉は乗降両用、中間の2つの無人の扉は乗車専用だったが、この無人の扉に降車用のICカード読取機を増設して、すべての扉で乗降できるようになる。
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