活況を呈する「Jリート」 創設10年目の課題

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一部は昨年前半に増資を再開していたが、今年に入って日本ビルファンドやジャパンエクセレント(JEI)、福岡リートの各投資法人が相次ぎ増資を実施。企業の社債に当たる投資法人債も年明け以降、オリックス不動産や森ヒルズリートが発行を決めた。JEIの運用会社、ジャパンエクセレントアセットマネジメントの戸田千史社長は「リートは半歩先取りして物件取得に動く必要がある。増資でLTV(総資産負債比率)が下がり、約200億円の物件取得余力もできた」と話す。

金融機関のリートに対する融資スタンスにも変化が出てきた。リートはもともと、株式会社と違って利益の内部留保ができない仕組みで、新規物件を取得するには、増資や借入など外部から資金を調達する必要がある。また、不動産は長期保有が前提の半面、資金の借入期間は最長5年程度のため、保有し続けるには資金の借り換えが必至。こうした中、金融危機後は借り換えに苦難するリートもあったが、最近では「企業の資金需要が減退する中、各行とも血眼になって融資案件を探している」(大手銀行)という。

市場活況が続く中、上場の動きも見られる。東急電鉄と並び、東急リアル・エステートの共同スポンサーだった東急不動産は「商業施設やオフィスを投資対象とするリートを12年度にも上場させる」と公表。大和ハウス工業も上場を検討しているとみられ、07年以来途絶えていた新規上場の可能性も出ている(合併リートの再上場除く)。

財務面に不安を抱えるのは、一部下位リートのみだ。インヴィンシブル投資法人は1月、60%を超えたLTVを6カ月以内に解消できなかった可能性があるとして「期限の利益を失い、直ちに債務を弁済しなければならない」と公表。同法人の運用会社、コンソナント・インベストメント・マネジメントは「現在、金融機関と交渉中」とし、2月末の決算発表に注目が集まっている。

Jリートは揺籃期 問われる独立性

一方、金融危機時に資金繰り難に陥った経験などを踏まえ、Jリートの再強化を図る動きも出始めた。

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