功労者「サンドバーグ氏」退社が示すメタの現在地 フェイスブック時代の「顔」が今秋去ることに

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メタを去ることはサンドバーグ自身の決断であり、同氏は週末に電話でザッカーバーグに知らせたと、サンドバーグの下で働く従業員の2人が語っている。そのうちの1人によると、サンドバーグはハワイにいたザッカーバーグにいち早く知らせたいと思っていたとのことだ。

6月1日のフェイスブック投稿で、ザッカーバーグはサンドバーグを称賛し、「私たちのようなビジネスパートナーシップがこれほど長く続くのはめずらしい」と述べている。ザッカーバーグはメタの次期COOに、長年、製品部門の幹部を務め、過去10年間のフェイスブックの成長の多くを率いてきたハビエル・オリバンを指名した。

グーグルからフェイスブックへ

サンドバーグの評判は2010年代に頂点を極めたが、そこからほど遠い状態でメタのCOOを退任することになる。ハーバード大学を卒業し、クリントン政権時代にラリー・サマーズ財務長官の首席補佐官を務めた同氏は、グーグルの初期ターゲット広告事業を数十億ドル規模の巨大事業にまで成長させ、シリコンバレーでその名を馳せた。

フェイスブック入社後は広告事業を発展させ、若者中心のフェイスブック取締役会に存在する「大人」と評された。サンドバーグは、フェイスブックのデスクトップ向け広告フォーマットの開発を助けた後、モバイル広告戦略の構築に成功した。

サンドバーグが入社する前の2007年に1億5300万ドルだったフェイスブックの売り上げは、2016年には276億ドルになった。広告事業は引き続きメタの売り上げの大半を占めている。

サンドバーグの評価は、フェミニストのビジネス書『リーンイン』によってさらに高まった。その内容は、彼女自身の行政や事業での経験を基にした、働く女性向けのマニフェスト(宣言)で、同書はベストセラーとなった。一部の批評家は、サンドバーグのアドバイスは彼女の特権的な人生に由来するものだと指摘したが、同氏は個人としてのブランドを確立したのだ。

しかし、2016年のアメリカ大統領選挙の後、フェイスブックは、国民の分断を助長するのに悪用されたとして、厳しい監視の対象となった。選挙期間中、同社の方針とセキュリティの責任者だったサンドバーグは、当初はこの問題を無視し、後に世間の反響への対応を先延ばしするようになった。

2018年には、有権者をプロファイリングする企業であるケンブリッジ・アナリティカの個人情報に関するスキャンダルにも巻き込まれた。同社は、フェイスブックのデータを不適切に利用していた。広報業務を管理していたサンドバーグは、このスキャンダルと曖昧な対応についての責任を問われたのだ。

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