東京ドームの「顔認証」実際使ってわかった不便さ 入場時は顔パスでも再入場時は紙チケにハンコ
GW前にオープンしたeスポーツ施設「レッド」の顔認証システムはどうか。同施設が導入したのは、不動産会社プロパティエージェントの子会社でスタートアップ企業のDXYZ(ディクシーズ)のシステムだ。三菱地所が丸の内地区に導入したのも、DXYZからのOEM(相手先ブランドによる生産)供給である。
使い方は以下の通りだ。最初にレッドのオフィシャルウェブサイトにアクセスして会員登録し、クレカ情報などの個人情報を入力したうえでチケットを購入する。異なるのは、購入するのが電子チケットである点だ。スマホでマイページを開くと「チケット確認」の画面上にQRコードが表示され、そのまま入場ゲートで読み込ませることができる。
顔認証を利用するには、DXYZの専用アプリ「FreeiD」をインストールする必要がある。会員登録して顔を撮影する手続きを終えると、利用できるサービスの一覧が表示され、レッドを選択すると自動で連携して入場できる状態になる。入り口に設置されたタブレット端末に顔を映すとゲートが開いた。
レッド内には、さまざまなスポーツアトラクションが用意され、入場者が順番を待っていた。筆者もゴルフゲームで久々にクラブを思いっきり振ってみたが、こうしたスポーツ系施設では財布やスマホはロッカーに預けて遊ぶほうが安心だろう。今後、施設内の自販機などで顔認証決済もできるようにする計画だ。eスポーツ施設のみならず、温泉街やビーチなどのリゾートなど財布やスマホを持ち歩くのが面倒な場所でも、顔認証のメリットは存分に感じられるだろう。
1度の登録でさまざまな顔認証エンジンに対応
DXYZが提供する顔認証サービスでは、利用者が許諾した事業者のサービスで使える「オプトイン方式」を採用している。異なる顔認証サービスごとに顔情報を登録しなくても、一度「FreeiD」に登録すれば、連携サービスを選んで許諾するだけで利用できるという仕組みだ。
DXYZの木村晋太郎社長は、 「1度の顔情報(の登録)で、さまざまな顔認証エンジンに対応できる技術で特許を取得しており、三菱地所にも顔認証プラットフォームとして提供している。さまざまな顔認証エンジンと繋いで利用できるサービスを広げていきたい」と顔認証のプラットフォーム化に意欲を見せる。
顔認証エンジンは、カメラに映った顔画像から特徴点を解析し登録済みの顔情報を照合して本人かどうかを認証する技術だ。日本製ではNECやパナソニックなどが提供しているが、中国製も技術的には高く評価されている。アマゾンもAWSクラウドユーザーには無償で顔認証エンジンを提供しており、日本でも利用企業が増えているという。
三菱地所のDX推進部統括、春日慶一氏はDXYZのシステムを導入した背景について、「街の中で顔認証を利用する場合、決済サービスに求められるような高精度なエンジンは必ずしも必要ではない。用途に応じてセキュリティレベル、認証精度、コストの3つを比較して最適なエンジンが選べる方が良いと考え、DXYZの仕組みを導入した」と語る。
エリア全体に顔認証サービスを広く普及させていくには、1社限定ではなく、テナントのニーズに応じてさまざまな顔認証サービスが選べる方が望ましい。さらにセキュリティ面からも顔情報をあちらこちらの事業者に預けるよりも、信頼できる事業者に登録してさまざまなサービスを利用できるほうが安心だ。三菱地所としても、街を訪れた人の情報を共通IDで管理しやすくなるメリットがある。
不動産分野でのこうした顔認証サービスの需要は、大規模施設に限らず、マンションなどでも拡大すると予想されるが、重要なポイントはいかにユーザー体験の向上に寄与できるかだ。
利用者が満足すれば普及が進み、それによって事業者側もほしいデータを収集でき、より良いサービスの実現につなげられる。そうした好循環を生み出せるかどうかが今後の普及のカギを握る。
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