30~40代から兆候も!「腎臓病」の知られざる怖さ 心臓病や脳卒中で死亡するリスクが高まる

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では、自分の腎臓はどんな状態なのか、どうすればわかるのだろうか。それについて、柏原さんは次のように話す。

「腎機能の低下で生じる浮腫や貧血といった症状は、かなり進行しなければ表れません。自覚することが難しい病気なのです。だからこそ、健康診断で行われる検尿が大事になります。タンパク尿を調べる検査で、+が1つならたまたまタンパク尿が漏れ出た可能性がありますが、再検査が必要です。+が2つになると、何らかの腎臓病が疑われます」

さらに、「推算糸球体濾過値(eGFR)」を調べるという方法もある。これは、血液検査でわかる血清クレアチニンの値から求められるが、血清クレアチニンの測定は厚生労働省が定める特定健診の項目には含まれないため、医療機関で検査する必要がある。

eGFRはこの血清クレアチニン値から求めることができる。柏原さんが立ち上げた日本腎臓病協会のHPなどでeGFRの値をチェックすることが可能だ。

「問題はeGFRが45を下回った場合。生涯の間で透析のリスクが高くなります。一方、30~40代で60を切っていたら要注意です。すでにCKDに罹患している可能性があります」(柏原さん)

CKDに関しては、去年8月に初の治療薬(製品名:フォシーガ)が厚生労働省の承認を受けて、現在は健康保険が適用されている。だが、腎機能は一度低下してしまうと、どんな治療をしても元の状態に戻すことは難しい。そう考えると、腎臓病にかからないことが大事なのは言うまでもない。

老化のほか、肥満やストレスも要因に

腎臓病の最大の原因は老化で、腎機能は加齢とともに低下していく。ほかにも肥満や運動不足、過度な飲酒、喫煙、ストレスも腎機能を低下させるファクターになっている。生き物である以上、老化による腎機能の低下は避けられないが、そのスピードを生活習慣の是正で遅らせることはできる。まずは高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病がある人は、しっかりコントロールすることが重要だ。

規則正しい生活や禁煙、食べすぎ・飲みすぎを防ぐ食事は、“やったほうがいい”と誰もが頭ではわかっていることだ。だが、実践するとなると意外と続かないものだろう。

柏原さんは、「特に会社勤めの人は残業で夜遅くに食事をしたり、ストレスのはけ口としてお酒を飲んだりします。そういう毎日を送っていれば、休日は疲れてしまい、運動をする気にもならない。そういう環境を何とかしないとなりません」

と、会社が主体となった従業員の環境改善が必要であると指摘している。

そんななか、スマホのアプリを使った行動変容によって健康を支援しようというプログラムが開発されつつある。近々、医療機器として薬事承認され、保険適用となる可能性が十分にあるそうだ。

2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳。年々、延伸しているが、一方で健康寿命との差は10年ほどある。何らかの医療や介護の世話になる10年間をいかに縮めて、健康寿命を延ばすことができるか――。そのカギを握る1つの臓器「腎臓」ともっと向き合ってはどうだろうか。

(構成:ライター・佐々木由)

山内 リカ 東洋経済オンライン 編集者
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