東京都「中3英語スピーキングテスト」深刻な問題 高校入試に活用するのはあまりに「危険」だ

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さらに言えば、コメントの内容をどのくらいの生徒と保護者がきちんと理解できるのか、いささか疑問です。レベルBのコメントには「文を組立てながら複数の文を使って話すことができる」とありますが、どういうことを伝えたいのか、少なくとも筆者にはわかりません。

手元にある、レベルBの生徒への「学習アドバイス」の前半部にはこう書かれています。「あなたは『相手の質問を聞き取り、情報をもとに的確に答える力』を伸ばすとよいでしょう。質問される場面を想定し、相手に明確に伝わるように答える練習をしましょう」。前段には「相手の質問を聞き取り、情報をもとに的確に答える力」が不足していると書かれていますが、具体的にどういう点で、そのような力がどう不足しているのかを教えてくれないと対応のしようがありません。

一方、後段にはその力をつけるために、「質問される場面を想定し、相手に明確に伝わるように答える練習」とありますが、「質問される場面を想定」するには、どうすればよいのか。思案に暮れる中学生の姿が浮かびます。

これでは、これまでの学習の成果を知り、今後の目標を定めるのはかなり難しいということが分かります。都教育庁はESAT-Jは構想を立ててから、長い時間をかけ、検討を加えてできあがったものだと胸を張りますが、重要なのは時間そのものではなく、検討の中身です。

協定先の民間企業を頼り切るのではなく、全体をきちんと制御することができる見識と実行力を備えた、本当の意味での「有識者」を結集してことにあたるべきであったと残念でなりません。

不受験者のスコアは「推定」する理不尽

EAST-Jの実施にあたって都教委は、「ESAT-Jを受験しなかった生徒も、東京都立高等学校入学者選抜において不利にならないように取り扱う⇒当該不受験者の学力検査の英語の得点から、仮の「ESAT-Jの結果」を求め、総合得点に加算する」としています。

つまり、「ESAT-Jの結果」を「当該不受験者の学力検査の英語の得点から」推定するというのです。それができるなら、多種多様の問題を抱えたESAT-Jをあえて導入する必要などあるでしょうか。

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