中央線グリーン車「半導体不足」?導入延期の真相 計116両を新造予定、何に使う分が足りないのか

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中央快速線グリーン車の導入はこれまでも延期されてきただけに、半導体不足のほかにも遅れる理由があるのではないかと考える人もいそうだが、JR東日本は「現時点では、半導体不足以外は(理由は)ありません」と回答している。地上設備の工事は予定通り進める計画であるとのことだ。

中央快速線を走る元常磐線地下鉄乗り入れ用車両の209系1000番台。グリーン車連結に向けた車両改造中の編成不足を補う助っ人として転入した(写真:村上暁彦/PIXTA)

しかし、グリーン車の導入が遅れることで、中央快速線そのものの改良計画に影響が及ぶことは十分にありうる。その1つがホームドアの整備だ。以前から、同線の地元ではなるべく早く設置を進めてほしいという要望が出ている。しかし、同線の場合はグリーン車を導入して12両化してからでないと整備が難しい。

ホームドアの設置に影響は?

JR東日本は今年4月、バリアフリー化の費用を運賃に上乗せできる制度を活用し、東京圏在来線のホームドア整備計画を拡大するとともに時期も前倒しして、2031年度末頃までに244駅(複数路線が乗り入れている駅で路線ごとに数えた場合=線区単位では330駅)の758番線に整備する計画を発表した。この中には中央快速線の24駅も含まれている。

計画では、2025年度までに線区単位で101駅に整備するとしている。ただ、グリーン車導入が早くても2023年度末(2024年春)となると、2025年度までに中央快速線のホームドア設置は難しいかもしれない。

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なお、2022年度は京浜東北線や南武線、中央・総武線各駅停車の7駅でホームドアを使用開始する予定だが、「世界的な半導体不足の影響により、使用開始予定は変更となる場合があります」としており、ここにも半導体不足の影響が見られる。

中央快速線のグリーン車導入遅れは、世界的な半導体不足が鉄道にも影響を及ぼしている事例だ。さらに、車両の新造だけではなく、駅など各種設備の整備にもドミノ倒しのように響いてくるおそれもある。半導体不足が今後も続けば、JR東日本や同線に限らず、さまざまな鉄道の計画に遅れが出る可能性があるだろう。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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