ゼネコンが自らの手で招いた「建設業の衰退」 外国人を入れても職人不足は解消に向かわず
これから2020年に向けて、新国立競技場や選手村などの五輪関連施設、さらに品川操車場跡地、渋谷駅周辺、虎ノ門・赤坂地区、羽田空港跡地などの大型工事が続々と動き出す。
「現状では65歳を過ぎた団塊世代の技能労働者を呼び戻し、外国人を活用して『何とかしのごう』と考えている企業がほとんどだ。2020年が過ぎれば、反動減で建設需要が大きく落ち込むのを心配しているのだろうが、その時は団塊世代が完全にリタイアし、外国人もいない。ますます業界からヒトがいなくなる」
国土交通省幹部は、さらなる人手不足の可能性を否定しない。
「下請け叩き」が自らの首を絞めた
建設業の職人不足は1990年代後半から始まった処遇悪化が原因だ。それを招いたのは、重層下請け構造によるゼネコンの下請けたたき。かつては3K職場でも高い給料が稼げるのが魅力だった、建設現場への若年層の入職率が一気に低下し、高齢化が加速していた。
こうした建設業の産業構造は、前回の東京オリンピックが開催された1960年代の高度経済成長期、急増する建設需要に応じて労働者を効率的に確保するために確立された。10年ほど前にある準大手ゼネコン社長からはこんなエピソードを聞いたことがある。
「自分が入社した当時はからくりもんもん(刺青)を背負った社員もいて、トラブルがあるとツルハシ片手にトラックの荷台に乗り込んで現場に駆け付けたもんだ」
それから50年、技能労働者を正社員として抱えているゼネコンはない。1次下請け業者ですら抱えないようになっており、技能労働者を雇用しているのは2次下請け以下の中小零細業者。「受注量が大きく変動するなかで、ゼネコンみずからが技能労働者を社員として抱えるのは困難だ」(大手ゼネコン首脳)と直接雇用には相変わらず後ろ向きだ。
「製造業なら、工場労働者がトヨタ自動車の正社員になれるが、建設業では名前も聞いたことのない下請け業者にしか入社できない。しかも給与が製造業より1割以上も安い。若者が建設業に就職しないのは当然。業界に危機感が足りない」。国交省のある幹部も警鐘を鳴らす。
日本建設業連合会(日建連)は、3月にも人口減少社会に対応した未来型の産業構造への転換を目指す、「日建連中長期ビジョン」を策定する。2014年12月に公表した中間とりまとめでは、「担い手(とくに若年技能労働者)の確保・育成」を最重要課題に挙げるが、本当に産業構造の転換にまで踏み込めるのか。残された時間はわずかだ。
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