東京⇒ロンドン、33歳の私が痛感した男女不平等 制度は整っていても表面を削れば偏見が顔を出す

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仕事ができる若い女性ほど仕事を頼まれる――ロンドンでも「女らしさ」の問題にぶつかりました(写真:Maridav/PIXTA)
日本では、男女の性差別の問題がようやく盛んに論じられるようになりました。その点、フェミニズム発祥の地であるイギリスは、制度上の男女差別は目立たなくなってきているといいます。ただ、社会生活の根底にある性差別意識がまだ根強いよう。MBA取得後、ロンドンの投資会社で働く33歳の女性が目撃した性差別とはどんなものなのでしょうか?
日本人でもイギリス人でもない女性が、自らの体験をもとに日本語で日本人に向けてロンドンのことを描いた『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』より一部抜粋、再構成してお届けします。

ロンドンは東京よりも生きづらくないけれど

「フェミニズムってよくわからない」と彼は澄ました顔で私に言った。

ロンドンの素敵なレストランで美味しいご飯を食べて美味しいワインを飲んでいるときだった。彼とは3回目か4回目のデート。最初はそんなに興味はなかったけど、映画の好みやキスのうまさなど、もうやめようかと思っていたときにいつも意外なところが心地よく驚かされて、切らずにいた。

でも、その夜は2人の間には微妙な緊張感というか、嚙み合わない、すれ違いの会話が続いていた。私が、あなたともっと一緒に時間を過ごしたい、っていうことを、彼の気持ちを傷つけないように回りくどいけど素直な言葉で説明しようとしたら、彼は私が理由なく責めてきた、と受け止めたみたいで、不機嫌にイライラし始めた。私はそれなりの関係になりつつある対等な者同士で普通に表現してもいいことを言っていただけなのに。それもすごくやんわりと。

彼が苛立ったのがすぐわかったので、私は上手に会社の話に変えた。

「最近私の会社はもっと女性社員を採用しようとしててダイバシティの取り組みをいろいろやっている」と言ったら、彼の口をついて出たのが、冒頭の名言。

私にイラついていたから私を傷つけるためにわざと言ったのか。それとも思わず本音を言ってしまったのか。どっちにしてもそれって気持ち悪い。デートの最中に言う?

ストーカーされ、ハラスメントを受け、常に物腰や態度への固定観念に囚われた東京よりロンドンのほうが女性にとって生きづらくないだろう、と期待していた。たしかに生きづらさ度合いはロンドンのほうが億倍マシだけど、フェミニズムがわからない彼は私の期待に冷水をかけた。

日本と違って欧米では、60、70年代にフェミニストがデモをしたりしてフェミニズムが市民権を得ていて政治的にも学問的にも一定評価されている。イギリスには80年代にすでに女性首相が誕生していた。ジェンダー、そしてもっと言えば、人種と性のダイバシティは政財界での最優先事項。

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