新日鉄・住金合併の真相、韓国ポスコが火付け役
悲願の高炉建設へ アジア進出に拍車
合併に伴い、関係者の注目が集まっているのが、海外での高炉(溶鉱炉)建設だ。高炉の建設費用は数千億円に上るため、両社はこれまで二の足を踏んでいた。「統合により、資金力が高まる」(山口氏)ことになり、高炉建設が現実味を増す。
目下、世界の鉄鋼需要の拡大を牽引するのは中国だが、日本のメーカーは同国での高炉建設に踏み切れないでいる。地場のメーカーが乱立し、増産投資を繰り返したため、供給過剰が指摘されているほか、外資の出資規制もあり、事業の主導権を握れないという事情がある。
進出先として中国よりも現実的なのは、東南アジアを中心とした新興国だ。今後の成長余地が大きく、グローバルに展開するアルセロール・ミタルも欧米ほどの高いシェアを持っていない。中でも、新日鉄や住金の最大顧客である自動車メーカーが数多く進出していることから、鉄鋼業界内にはタイでの高炉建設を予想する声もある。
ただし、アジア攻略に残された時間はそう多くない。自動車メーカーは、コストの安い現地での調達比率を年々引き上げている。現に日産自動車がタイで生産している小型車「マーチ」で使用する鋼材のうち、95%が現地で調達したものだ。手をこまねいている間に、進出する余地は狭まる。
すでに高炉建設に動いたライバルがいる。韓国最大手のPOSCO(ポスコ)だ。
同社は10年10月、インドネシアで、現地の国営鉄鋼メーカーと合弁を組み、高炉を備えた製鉄所建設に着工した。13年までに年間300万トンを生産できる体制を整え、「そのうち150万トンは厚板にしてインドネシア国内に出荷。50万トンは輸出する計画」(アジア経済研究所の安倍誠主任研究員)だという。その後、300万トンの設備を増強する計画もある。