説得力に欠ける人は「目」に迫力がこもっていない 心を動かす感情は万人に共通、文章力も重要だ

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要するに、目に語らせることが重要なのだ。ただし、顔全体の表情はころころと変えず、不必要に顔を歪めたり、滑稽なほど大げさな表情になったりしないように注意する必要がある。

それぞれの弁論に適した感情を伝えるのは、あくまで目の役割であり、時には力を込めて、時には穏やかに、時にはどこかを見据えるように、時には楽しげに、というふうに、目つきを使い分けよということである。

弁論とは、いわば体全体で語りかけることであり、その分なおのこと、自分の言おうとしていることと体の動きが一致していなくてはならない。

自然は、馬やライオンにたてがみや尻尾や耳を与え、人間には感情を表すための目を与えた。弁論において声の次に重要なのは顔の表情であり、顔の表情は目によって決まるのである。

表情や仕草は、言葉が通じない人にも伝わる

表情や仕草といった要素には、それぞれ自然から与えられた、ある種の特別な力が備わっている。無知な者、一般大衆、異国の人々にも、弁論を通じて訴えかけることができるのは、この力のおかげにほかならない。

言葉による表現は、話し手と同じ言語を話す者にしか伝わらず、優れた思考もまた、それを理解できる知性を持った者にしか伝わらない。

ところが、心の状態を写し取った声や表情、仕草は、相手が誰であろうと万人に伝わる。

それは、心を動かす感情というものが万人に共通であり、なおかつ、誰もが同じ身体言語を通じて、相手の感情を読み取ったり、自分の感情を表現したりするからだ。

現代の教育では、要点をわかりやすく伝える文章の書き方を学ぶことが重視されている。同時に、社会に出る学生にとっては、適切な口頭表現をおこなうスキルが必須だと考える人も増えてきている。
話す能力と文章を書く能力にはたして関係があるのかと問う人もいるだろうが、キケロは間違いなく両者に関連性があると考えていた。
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