「反イスラム」が高まれば法規制の議論も 鹿島茂氏が読み解く仏紙襲撃事件(後編)

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――共和国の理想をもってしては、20世紀、21世紀と戦争が続いて問題を解決できていない。そのことはどう考えるんでしょうか。

そういう、差異を認めた上で仲良くやっていくという差異主義は、リベラル左翼の考え方なんですね。フランスでは少数派です(笑)。

「反イスラム」を禁ずる法律の制定はあり得る

――このままでは、移民の間に不満を抱えた若者が増えそうです。テロリストを増やさないための解決の方法はないのでしょうか。

難しいですね。可能性としてもっとも高いのは、移民を制限してしまい、今いる人たちが、時間の経過とともに、フランス人になるということ。

ただ、フランスは成文法の国であるから、ゲソー法のように、「反イスラム主義的言動を人道に対する罪として禁ずる」動議が出て成文化されることが考えられます。今、我々は反テロリズムであって、反イスラムではない、といっている。だが、今後、「反イスラム」を煽るような言説が増えてくる可能性はある。排外主義的な主張をする人は増えていて、国民戦線のマリー・ルペンはその代表。いま、いちばん危険なのは、次の選挙で国民戦線がかなり票を伸ばしそうなことだ。

「反イスラム」が人種差別だということになれば、共和国原理では認められないことになる。フランス人は議論好きだから、「反イスラム」は人種差別じゃないのか否か、という議論が必ず出てくると思う。フランス人が公的な場でのタバコを禁ずる法律を認めることはあり得ないといわれていたが(笑)、法律はできた。法はできれば守られる。犬の糞を飼い主が始末しなければ罰金刑、ということにしたら、街が見事にきれいになった。反イスラム主義を共和国原理違反とする法律ができてもおかしくはない。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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