「制御不能な円安」日本企業と家庭にもたらす負担 大規模な介入があっても下落は止まらない
もう少し詳しく見てみよう。10%の円安は製品の売上数を20%上げるだろうか、10%だろうか、それとも5%だけだろうか。
ほとんどの製品に関しては、円安による促進の程度は、2011年から2019年の間にはその10年前と比較してかなり小さかった。そして、円安が輸出に不利に働いた28%の製品に関しては、円安による売り上げ減少幅は10年前よりひどくなっていたのだ。
結論としては、日本の輸出業者は鎮痛剤依存者に似ている。同じ効果を得るためだけにますます多量の服用が必要になっていき、その間にも基礎となる健康が損なわれていくのだ。
輸入への影響、あるいはその欠如
教科書が教えるところによると、通貨の下落は輸入品の価格を上げることによりGDPをその分上昇させる。これにより、消費者も企業も輸入品の代わりに国内で生産された同じ製品を買うようになる。日本の輸入の構造を見てみると、この理屈が日本の場合には該当しないことがわかる。
まず、日本の輸入品の約40%は鉱物性燃料や食料や原材料などの品目であるが、それらには国内での代替品がほとんど、あるいは、まったくない。しかも価格が変わっても、国が必要とする食料や石油や鉄鉱石の量はほとんど変わらない。
円安の唯一の帰結として、日本の企業や家庭は海外の生産者からより高い価格でモノを買わなければならなくなる。これらの商品に関しては、円安は単に収益を日本から海外へと移動させるだけなのである。
輸入に頼っている食料品をより高い価格で買わなければならないことが、1980年代半ば以来、日本の家庭における食費の割合が増えている理由の1つである。そのためにほかの商品に使う金が少なくなってしまう。食料品に費やす割合は国の発展を示す古典的な尺度である。
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