その一方で、コロナ禍を過ごした影響が大きく感じられたのは、「リモート下でこれ以上得られるものが少ない(21.3%)」という回答に一定の存在感があったこと。
企業によってはコロナ禍以降を原則在宅勤務とし、入社以来数えるほどしかオフィスに出社していない若手社員もいる。もちろん、必ずしもリモートワーク=成長が少ないとは限らない。しかし、定性インタビューでは、離れた場所にいる上司が適切に本人を評価できず、適切な成長機会を提供できていないケースや、同僚と切磋琢磨することが少なく成長実感を得にくいといった側面が、このような気持ちにさせている側面もあるとの声も多く聞かれた。
周囲との人間関係は逆に良好
それとは逆にコロナ禍ならではの結果だと感じられ、非常に興味深いのは、「周囲との人間関係が悪い」という理由が非常に低い(8.2%)ことだ。転職マーケットにおいて、職場の人間関係は常々転職理由の上位となる項目だった。
この変化は、仕事以外のコミュニケーションが大きく減ったことも要因だろう。これはZ世代だけに限った話ではないが、リモートワークで心理的にも一定の距離を保った人間関係でいられることが、逆に心地よいという人もいる。職場の飲み会が苦手だった人にとっては、付き合いが減って好都合だという意見もある。
また、働く環境が変わったことに配慮し、コロナ前よりも丁寧に社員をフォローするようにもなった会社もある。働き心地の悪さを理由にした転職が減ったことは、コロナ禍を当たり前に過ごした世代のポジティブな傾向だと言える。
しかし、ここまでの結果からZ世代優秀層が、より高い給与を求めて成長と挑戦をしたい人たちばかりかと言えば、全体の様相は少し異なる。「次の転職先に期待すること」は2位以下にほとんど差がなかったからだ。
「やりがいのある仕事内容がしたい(33.3%)」「能力・スキルを身に付けたい(31.4%)」「副業が可能(29.4%)」「柔軟な働き方ができる(29.4%)」……と、希望の方向性は多様だった。そのほかにも、「起業のための準備ができること」「地域限定社員(転勤なし)であること」「リモートワークがしたい」「自分の夢に割く時間(仕事以外の時間)を取りたい」など、実に意見が多様化しているのがZ世代優秀層の特徴だと言える。
もちろん、「Z世代」の個性もそれぞれであり、一概に「世代」としてくくることは決して正しいわけではないし、あくまで今回の調査から言える傾向値にすぎない。
とはいえ、転職を考える若手個人は、看板ではなく、やはり自分に合った環境をいかに選ぶかが重要になっている。逆に、組織としても、社員1人ひとりの多様な価値観に応えられる組織に変化を遂げていくかが、そして、1人ひとりをいかに理解しようとできるかが、新世代の優秀な人材に活躍いただくための必須条件になってきているのだろう。
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