移住数が最多「20代女性」が東京に集まる深い理由 実は「企業の東京離れ」もほとんど起きていない
私(市川)が理事長を務める大都市政策研究機構が発表のデータを見ると、コロナ前の2019年には、東京都の総人口が1年間で11万人以上増加しているのがわかります。
コロナ禍が社会を直撃した2020年でも、東京都の総人口は約2.3万人の増加。つまり、外出自粛が盛んに喧伝され、テレワークが一気に広まった2020年でさえ、東京都の総人口は増え続けたのです。
東京都の総人口が減少に転じたのは、3回目の緊急事態宣言が発出された2021年のゴールデンウィーク頃から。コロナ禍も2年目に突入し、世界的なスポーツの祭典が間近に迫ってきたという危機感も重なって、社会全体に何となく重たいムードが漂い始めた頃です。この頃から東京都の人口は緩やかに減少していき、2021年の年末には、年初に比べ約3.9万人減少しました。
流出・流入の傾向を探ってみると…
次に、東京の人口が「増えた・減った」だけでなく、「東京に入ってきた人・東京から出ていった人」のデータも見てみると、2021年、年間を通して約42万人が転入し、約41万5000人が転出したため、トータルで転入超過になりました。
2021年、コロナ禍で東京都の総人口は減少したものの、東京では依然として、転出者数より転入者数のほうが多いのです。ただし年間の転入超過数は、2021年の約8万3000人、2020年の約3万1000人に比べ、2021年は約5500人と、その数はぐっと小さくなっていますが。
2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックという未曾有の危機に見舞われながら、人口の「東京一極集中」という、過去数十年の傾向に変化はありませんでした。
人々はなぜ、東京に集まるのでしょうか。その理由の一端が、グローバル都市不動産研究所の調査で明らかになりました。1958年から2018年までの60年間における、東京都への転入超過数を男女別に見てみると、2008年頃から女性の転入超過数が男性を上回っていて、2018年には女性4.8万人、男性3.4万人と、女性のほうが1.4倍以上多くなっています。
また、20〜24歳が第1位であることは過去数十年変わっていません。2018年の女性4.8万人の内訳を見ても、20〜24歳が3万人強と、年齢別で最も多くなっています。
この、20〜24歳女性の動向を調べるために、政令指定都市から東京都への転入超過数を見てみると、20〜24歳という転入超過人口が最も多い世代において、横浜市、札幌市、仙台市、福岡市、新潟市など全国に20ある政令指定都市からの東京都への転入が顕著であり、しかも女性のほうが男性より人数の多い傾向がはっきり見られます。
20の政令指定都市のうち例外は神戸市、京都市、堺市、川崎市だけで、神戸市、京都市、堺市は男性のほうが転入超過数が多く、川崎市へは東京からの転出超過数が多くなっています。おそらく、「大学や短大受験を機に地方から政令指定都市に転居し、就職を機に東京都へ転出していく」パターンが多いのだと推測できます。
そして、こうした傾向は特に女性に強く出ているわけです。言い換えれば、東京に一極集中している人口の大きな部分を占めているのが、全国の政令指定都市を経由して東京に転入してくる20〜24歳の女性だということが明らかになりました。