前述した道頓堀ナイトカルチャー創造協議会は道頓堀XRパークの一環として、VRメタバースサービスの「VRChat(ブイアールチャット)」、およびVR機器だけではなくスマートフォンの画面から3D CG空間を見ることができるブラウザー拡張サービス「Hubs(ハブ)」を用いて、アバター姿で散策できる「バーチャル道頓堀」も提供していた。
派手な色合いの看板は現実の道頓堀周辺にそっくり。飲食店の店頭は立体的な表現がされているのも特徴的だ。
道頓堀ナイトカルチャー創造協議会の参加団体・企業を見ると、道頓堀商店会、JTB、公益財団法人大阪観光局、NTTドコモ、TryHard Japan、南海電気鉄道、西日本電信電話、パナソニック、富士通、野村不動産コマースとあった。道頓堀商店会が参加していることから、リアルな看板デザインを使うことに関しての権利問題をクリアできたのだろう。
興味深いのは高い場所への移動手段も用意されていたこと。普段は入ることができないさまざまなビルの屋上から道頓堀商店街を眺めることが可能だった。VRであれば物理現象にとらわれない表現が可能だし、新しい観光スポットの開拓にもつながるという実証実験でもあったと思われる。
KDDI共同企業体が提供する「バーチャル大阪」
大阪府と大阪市が提供、KDDI、吉本興業、博報堂からなるKDDI共同企業体がコンテンツを制作し、国産VRメタバースサービスの「cluster(クラスター)」で公開されているのが「バーチャル大阪」だ。大阪・関西万博に先駆けて、注目度が高まってきた大阪の魅力を国内外に発信する目的で作られたコンテンツとなっている。
「バーチャル大阪」にログインすると、大阪を代表するランドマークの太陽の塔が現れる。このエントランスからは大阪・関西万博に出展される大阪パビリオンに関しての情報が見られるコンテンツや、同じくclusterで公開されているバーチャル渋谷、そして大阪の新市街エリアにワープできる。
この新市街エリアは、大阪城やスカイビルといった大阪の観光スポットをぎゅっとまとめた空間になっている。道頓堀というリアルな空間をスケール感をそのままに再現した「バーチャル道頓堀」と比較したときに、どちらの空間の作り方がいいとなるのか。簡単には答えが出せない。なぜならば、ステークホルダーによって答えが変わってくる問いだからだ。
とはいえ、いちユーザーから見たときの印象としては、ポータルやワープポイントのような出入り口を用意してしまえば、移動時間がかからないというメタバースの利点を考えると、1/1スケールのメタバース都市「バーチャル道頓堀」のほうが観光する楽しみが生まれると感じる。
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