年金改正!遅くなるほど「もらう金額」が増える 70歳受給なら42%増、75歳受給だと84%増額

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参考までに2020年の簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.64歳で、女性は87.74歳。ただしこれは平均値であり、中央値である死亡者数のピークは、男性が89歳、女性が92歳だ。どちらも平均寿命より長く、思っている以上に長生きだと、感じる方が多いのではないか。

もちろん、決定要因は寿命だけではなく、収入や資産の状況も大きい。企業ではまだ60歳定年制のところが多い。本来の65歳受給とするなら、空白の期間は5年。年金をもらうまで、退職金をいくらもらうか、退職後も嘱託社員など継続雇用で働くか、預貯金や遺産など蓄えがどれだけあるかにもよる。

また出費のほうも無視できない。住宅ローンや教育費は一段落し、生活水準も現役時代よりは落とすとはいえ、親の介護費や自分の医療費など、人生後半になってかかってくる費用もある。

特に自営業やフリーランス(個人事業主)など、国民年金しかもらえない業種は、早くからの備えが必要だろう。会社員の場合、国民年金(基礎年金)に加えて厚生年金ももらえる、いわゆる”2階建て”の構造だが、自営業は”1階部分”のみしかもらえない。

国民年金は満額でも月6.5万円と少ない。その分、自営業には定年がないものの、それでもいつかは引退しなければならない時期がくる。実際にわずかではあるが、国民年金の繰り上げ(早く受給)の比率が厚生年金より多いのは、自営業者が多いためともいわれている。

寿命や収入、個人の信条で最後に決まる

今後、5年に1度の財政検証などを経て、本来の受給開始が65歳から70歳へとさらに後ろ倒しになることなど、より大きな制度変更も考えられないわけではない。その意味では、もらっておけるうちに確実にもらいたい、という心情も理解できる。

「金額が減ってもいいから、早く受け取りたい」か、「遅く受け取ってもいいから、金額を増やしたい」のか。結局、年金の受給開始時期については、寿命や収入だけでなく、個人の信条も関わってくる。太く短くか、細く長くか、最終的にはこれという1つの正解はない。

ただいずれにしても、70代、80代になれば、多くの人にとって頼れる収入源は年金しかないのが現実だ。今から老後を見据え、年金のもらい方のありようを考えるのは、決して無駄ではないだろう。

本特集では、働きながらもらう「在職老齢年金」、夫(妻)が死亡後にもらえる「遺族年金」、離婚をしたときに必要な「年金分割」をはじめ、年金にまつわるさまざまな問題を取り上げた。ぜひ手に取って、少しでも余裕のある人生を過ごしていただければ、幸いである。

(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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