『ウォール・ストリート』--金融取引に極めて大事な2つのこと《宿輪純一のシネマ経済学》


 本作は、実は、切った・張ったという金融取引における興奮よりは、ゲッコー親子とジェイコブ親子の家族愛、そしてウィ二ーとジェイコブの恋愛といった感じで、“愛情”物語にウエートが置かれている。金融取引関係は全体の2割程度であろうか。
 
 とはいえ、最近の金融事情についてはかなり詳しく描かれており、ご覧になる方には、金融事情の勉強になろう。旧来の株式や社債等の証券取引に加え、アジアからの国際的な投資、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などのデリバティブ(派生商品)取引や、環境分野に対する先行投資まで出てきている。
 
 さらにオリバー・ストーンならではの視点で、金融取引について2つの点で学ばせてもらった。

1つ目はデリバティブ等の新しい金融商品についてである。映画の中では「子供に麻薬を与えるようなもの」とのセリフが印象的だ。デリバティブの場合は通常の商品と比べて数倍、モノによっては数十倍の変動率がある。
 
 相場の予想としては、「上がる・下がる」の読みによって勝ち負けの確率は変わらないが、儲かる金額・損する金額が格段に多くなる。そのため破綻する可能性も高まるというわけである。
 
 一般の投資家の方も含め、基本中の基本ではあるが、商品内容をきちんと理解することが重要である。特に、どの程度、損を被る可能性があるかを管理することが大切になる。この点を再確認できる。

またもう一つは社会派監督のオリバー・ストーンだけに、正義、正しいことは何か、ということが描かれる。前作『ウォール街』の場合には、まじめな会社を強引に買収しバラして収益を得ようとした証券会社(投資銀行)が問題で、今度は証券会社の中での不正を問題としている。正しさとは何か、それはお金儲けよりも大事だと言っているようである。

筆者も、金融映画ということもあり日本語訳や米国の金融制度についてほんの少しだけ協力させていただいた。



(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

しゅくわ・じゅんいち
映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングスなどに勤務。非常勤講師として、東京大学大学院、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学等で教鞭を執る。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa

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