ロシア人富豪ロマン・アブラモビッチ氏とウクライナ側の和平交渉担当チームの複数の幹部が、3月初めのキエフでの会合後に毒物の影響とみられる症状に苦しんだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
会合はウクライナでの戦争を終わらせる交渉の一環として行われた。情報の非公開を理由に同関係者が匿名を条件に語ったところによれば、アブラモビッチ氏とウクライナの交渉担当者らには、皮膚剥離や目の充血、視力喪失、頭痛などの症状が出た。毒物疑惑については米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じていた。
関係者によれば、アブラモビッチ氏とウクライナ側代表団のウメロフ議員は治療のため空路でトルコに移動した。首謀者やどのような毒物が使われたのかは不明だという。両氏とも回復しており、アブラモビッチ氏は和平仲介の取り組みに引き続き関わっている。
ウメロフ議員は「私は大丈夫だ」とツイートしたが、毒物による攻撃を受けたとの報道は確認しなかった。
ウクライナとロシアは29日にトルコのイスタンブールで約2週間ぶりに対面での交渉を行う。
アブラモビッチ氏はプーチン大統領に近いとされ、ウクライナ侵攻後に英国と欧州連合(EU)がロシアの新興財閥(オリガルヒ)に科した制裁の対象となっているが、非公式の仲介役として停戦交渉に関わっている。事情に詳しい関係者1人によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は、アブラモビッチ氏の和平プロセスへの関与を理由に同氏への制裁は控えるよう米政府に要請した。
ロシアは過去15年間、毒物を使った複数の攻撃への関与が指摘されている。2018年には英ソールズベリーで、元ロシアのスパイ、セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんが神経剤ノビチョクによる攻撃を受け、英当局はロシア情報機関の工作員の仕業だと指摘した。2人は一命を取り留めたが、毒物に接触した別の英国人1人が死亡した。06年にロシアの元情報将校アレクサンドル・リトビネンコ氏が放射性物質ポロニウムで毒殺された事件についても、英裁判所の判事はロシア工作員が実行したと判断した。
ロシアはこれら事件への関与を否定している。
原題:
Abramovich Suffered Suspected Poisoning During Ukraine Talks(抜粋)
More stories like this are available on bloomberg.com
著者:Bloomberg News
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら