84歳で「初のネイルサロン」へ行った女性の心情 「気がつけば老婆の手」それでも美しくなりたい

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また、〝現在ネイルケアをしているが、いつまで続けたいか〟という問いには半数以上が「70歳以上まで続けたい」と答えている。ネイルケアをしている人の目的は、「ファッションとして」「美容のため」「健康(衛生)のため」などが挙げられた。

「〝ネイルケアをしているシニア世代をどう思うか〟には、「おしゃれ」「金銭的余裕がありそう」「若々しい」など好意的な意見が上位を占め、「若作り」「みっともない」「恥ずかしい」といった否定的な意見は少数にとどまった。

ギフトで体験をして、やみつきになるシニア女性も

美智子さんの施術を担当したネイリストさんにも話を聴いてみた。

「シニアのお客様の場合、娘さんやお友だちのご紹介でいらっしゃる方が多いですね。みなさん、最初はおそるおそる……というご様子なのですが、一度体験されると、また足を運んでくださいます」

誕生日のプレゼントや敬老の日のギフトで〝ネイルケア体験〟をして、やみつきになるシニア女性も多いという。

「初めは〝なるべく控えめな色にして〟とおっしゃっていた方も、回を重ねるうちに〝今度は赤にして〟とか〝パープルがいいわ〟とか、〝攻め色〟を選ばれるようになります。高齢の方は、はっきりしたお色を塗った方が、お肌がきれいに見えることもあるんですよ。〝爪に目が行くので、手のアラが目立たなくていいの〟とおっしゃる方もいます。

また、お色は塗らず、爪や角質のケアだけされる方もいらっしゃいます。長年水仕事などをされてきたシニアの方は、甘皮の量が増えて固くなっているのですが、丁寧に取り除けばきれいな指先になります」

ちなみに美智子さんが体験したハンドケアとジェルカラーの施術代は合計で1万円ほど。2回目以降はこれにジェルオフの料金がプラスされるという。ただ、きれいな状態を保つには、毎月ネイルサロンで〝お直し〟をする必要がある。

美しい桜色に仕上がった美智子さんのネイル。「次は、もう少し濃い色に挑戦してみたい」そうだ(筆者撮影)

「少し贅沢かもしれませんが、今まで労ってこなかったぶん、自分に手をかけようと思っています。爪がきれいになったらうれしくて、今はお皿を洗うときもきちんと手袋をしているんですよ。ハンドクリームもまめに塗るようにしたらしっとりとしてきて、なんだか、とても楽しくなってきましてね」

美智子さんが手をひらひらさせると、ふわりと甘い香りが漂った。

手を見られるのがいやで、宅配便を受け取るのも躊躇してきたけれど、今は怯まずにドアを開けられるという。

「年を取れば美醜なんて気にならなくなる、というのは乱暴です。気にしていると思われたら辛いから、気にしないふりをしている人も多いんじゃないかしら。私は、思い切って〝美しくなりたい〟と声に出せてよかった。一生、もっときれいにしたいなと思いながら、この手を可愛がっていきたいと思います」

みきーる 文筆家、女子マインド学研究家

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みきーる / Mikiru

メンタルケアカウンセラーⓇ。女心を知って楽しく生きるためのライフハック“女子マインド学”を提唱し、「ホンマでっか!? TV」等に出演。応援歴30年超のジャニーズファンでもあり、現在はアイドル、推し活、恋愛や女性の悩みをテーマに執筆活動を続けている。著書に『「戦力外女子」の生きる道』(ワニ・プラス)、『ジャニヲタあるある』、『ひみつのジャニヲタ』(共に青春出版社)、『大人のSMAP論』(速水健朗氏・戸部田誠氏と共著・宝島社)等がある。

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