今の日本経済に高成長は可能なのか。その診断を抜きに再生のビジョンは描けない。
岸田文雄首相が自民党総裁選で掲げた「令和版所得倍増計画」。自身の出身派閥・宏池会(岸田派)を創設した池田勇人元首相が1960年に策定した「所得倍増計画」を模したものだ。
元祖の所得倍増計画は高度成長期の熱狂の中、10年で経済規模を約2.6倍にして目標を超過した。これに対し、人口減少や産業競争力の低下など、令和の日本経済の風景はまったく異なっている。そうした中での所得倍増の掛け声に疑問を感じた人も多いだろう。
長期的な日本再生計画を考えるとき、経済成長をどう捉えるかは中心的な問題だ。もし高い成長が見込めるなら、60年代の高度成長期がそうだったように格差や貧困の問題は経済成長が自然と癒やしてくれる。財政問題などに対するスタンスでも強気になれる。
しかし、構造的に高成長が困難なら、低成長下においていかに持続可能で、かつ国民が生き生きと生活できる社会を構築するかに政策資源を振り向けるべきだろう。そうすることが結局、将来の成長への種まきにもなるはずだ。日本経済再生のビジョンを描くには、今後の経済成長力を正確に見積もることから始める必要がある。
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