調布の道路陥没で露呈、大深度地下法の根本問題 「地上への影響はない」との前提は虚構だった

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2020年秋に調布市で起きた大規模な陥没事故。外環道のトンネル工事が原因だったが、工事を可能にした大深度法に問題はなかったのだろうか。

2020年10月18日、外環道のトンネル工事現場上の住宅街で発生した道路陥没事故(共同通信社ヘリから、写真:共同)

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「悩みましたが手放すことにしました。住み慣れた家であるだけに、残念です」

東京都調布市に住む田中宏さん(70代、仮名)はポツリポツリと言葉を絞り出した。13年前に建てられたその家は、白壁が目を引く木造2階建ての豪邸だ。2階までの吹き抜け玄関、広めにとった居間を持つ住み心地のいいわが家は、田中さんのお気に入りだった。

だが、田中さんはこの9月、「終の住処」となるはずだった自宅を売却し、他地域へ引っ越すことを決めた。

外環道のトンネル工事で巨大な「穴」

田中さんの「決断」を後押ししたのは、田中さん宅近くで発生した道路の陥没事故だった。2020年10月18日正午すぎに突然、長さ5メートル、幅2.5メートル、深さ5メートルの巨大な穴があいた。原因は、地下47メートルで行われていた東京外かく環状道路(外環道)のトンネル工事だった。

この工事は、関越自動車道の大泉ジャンクション(練馬区)と東名高速道の東名ジャンクション(世田谷区)の間、約16キロを2本のトンネルで結ぶもの。陥没事故が起きた後、すべての工事が中止された。事故後に行われた調査の結果、現場付近の地盤が緩んでいることがわかり、2年かけて地盤の補修工事を行うことになった。

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