2020年10月の陥没事故に続き、外環道でまた事故が発生した。事故の真因が突き詰められない構造は変わっていない。

シールドマシン事故が起きた大泉南側トンネル工事付近の様子。事故現場のすぐ脇には、事故概要についての説明看板が設置されている(記者撮影)
東京外かく環状道路(外環道)の「大泉ジャンクション(JCT)~東名JCT」区間におけるトンネル工事で、シールドマシンの損傷により工事が停止した。外環道の工事をめぐっては、2020年10月に調布市のトンネルの地表で陥没事故が起きて以来、2度目の工事停止となる。
外環道の事業者である国土交通省やNEXCO東日本は工事の原因について、「設計会社の設計図作成ミスにより、地下での止水を目的とする地中壁が、設計上の正しいトンネルの中心部よりも下方に約90センチ、水平方向に約10センチずれていたため事故を引き起こした」と指摘している。
大規模なインフラ工事でなぜ作図ミスが見過ごされたのか。トンネル工学が専門で、大阪大学名誉教授の谷本親伯氏に、事故の根本問題について聞いた。
基本作業を徹底すれば事故は防げた
――いったい何が問題で、今回のような事故が起きたのでしょうか。
何段階かに分かれて地中壁の図面の確認のプロセスがなされているはずなのに、どれ1つ機能していなかったことが大きな問題だ。こういった大きな公共事業を進めていくうえでの、組織的な問題点が浮き彫りになった。基本的な作業を徹底していれば防げた。
――具体的には?
工事を管轄する国交省関東地方整備局やNEXCO東日本は4月28日、「東京外かく環状道路 本線トンネル工事における掘進の停止 原因と補修の状況等について」と題する文書を公表している。地中壁の図面を作成する過程で、受注者によるCAD(コンピューター上での作図)操作上のミスが原因で、設計上の正しいトンネル中心位置に対して、図面の中心が下方に約90センチ、水平方向に約10センチずれていたこと」を事故の原因として挙げている。
さらに、「作成した図面について、受注者による確認が不足しており、トンネル中心位置の間違いに気づくことができなかったことが今回の位置の間違いの原因であることが明らかになりました」としている。
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