《プロに聞く!人事労務Q&A》出張中に休日を挟む場合、日当を支払わないよう就業規則を変えたいのですが?

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一定要件を満たせば、合意がなくても労働条件変更の法的効果が生じる

一定要件とは、
【1】変更後の就業規則を労働者に周知させている、
【2】就業規則の変更が合理的なものである、の2つの両方を満たしたときです。

【1】の周知については、例えば、(1)常時各作業場の見やす場所へ提示し、または備え付けること、(2)書面を労働者に交付すること、(3)磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること等の方法により、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知りうるようにしておくものです。

このように周知させていた場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、周知させていたことに該当します。

【2】の合理的かどうかの判断については、(1)労働者の受ける不利益の程度、(2)労働条件の変更の必要性、(3)変更後の就業規則の内容の相当性、(4)労働組合等との交渉の状況、(5)その他の就業規則の変更に係る事情、が総合的に考慮され合理性判断が行われます。

この合理性判断は、もともと第四銀行事件最高裁判例(最高裁1997年2月28日第二小法廷判決)において示されました。

第四銀行事件最高裁判決では、
(1)就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、
(2)使用者側の変更の必要性の内容・程度、
(3)変更後の就業規則の内容自体の相当性、
(4)代償措置その他関連する他労働条件の改善状況、
(5)労働組合等との交渉の経緯、
(6)他の労働組合又は他の従業員の対応、
(7)同種事項に関する我が国社会における一般的状況、
という7つの考慮要素が列挙されました。

これらの中には、内容的に互いに関連し合うものもあるため、労働契約法第10条では統合して列挙され規定されました。よって、第四銀行事件最高裁判例において列挙された7つの考慮要素から判断しても、今回の就業規則の改正内容は妥当といえると思います。なお、改正に当たっては、再度この最高裁判例の考慮要素を検討してみてください。

鈴木ひろみ(すずき・ひろみ)
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒業。東映CM入社。TV-CMの製作進行、プロダクションマネージャーとしてTV-CMの企画・製作を担当。その後、ファッション雑誌編集者を経て、1995年に鈴木社会保険労務士事務所を開設。著書に「どうなるの?わたしたちの労働環境」、「得する年金損する年金 図解新年金制度」など。


(東洋経済HRオンライン編集部)

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