フェイスブック 独走への次の一手
急成長するフェイスブックへは、これまでも複数のベンチャーキャピタル(VC)が出資してきた。が、「一部、無名のVCによる売名行為もあった」(業界関係者)。今回のゴールドマンの出資額はケタ違いで、これがフェイスブックのターニングポイントとなる可能性は大きい。
ゴールドマン出資で強まるIPO圧力
ゴールドマンの計画では、フェイスブック株式を新設会社「FBDCインベスターズ」を通じて、顧客へ販売。その売却額は15億ドル程度とみていた。ところが、今月11日の応募締め切りまでに、予想をはるかに超える数十億ドル相当の買い注文が殺到。予定より早めに応募が締め切られたほど、今やフェイスブックに対する投資家の関心は高い。
米証券取引委員会(SEC)の規則では、未公開企業でも投資家が500人を超えた場合、財務内容を公開する義務がある。今回のゴールドマンの動きで投資家が増えることは確実。FBDCインベスターズをめぐっては、フェイスブックの財務内容公開を避けるためのトンネル会社との見方も浮上しており、SECが調査を開始。ある投資家は「投資家が500人を超えれば、いよいよ新規株式公開(IPO)への圧力も強まるだろう」と期待を寄せる。
熱狂が高まる一方で、冷静な見方もある。今回の事情に詳しい仏大手企業のM&A担当者によると、「ゴールドマン以外の投資会社は出資を断っている。ゴールドマンでも出資をめぐり意見が二分していた」。
SNSの覇権争いは激しく、かつて圧倒的な人気を集めた「マイスペース」も最近では売却報道が出ている。フェイスブックは成長を続けられるか不透明だ。そこで、グーグルの技術者を高給で引き抜くなど、「次の段階」へ向かって着々と歩を進めている。その一つとされるのが、「フェイスブックフォーン」なる携帯電話。米報道によると、2年前から香港の大手キャリア、ハチソン・ワンポアの子会社と共同開発。今年春から夏をメドに欧米での発売を見込んでいるという。技術を擁したハイテク企業への脱皮を図ろうとすれば、そこにはアップルやグーグルとの衝突が待っている。
(ジャーナリスト Ayako Jacobsson(在シリコンバレー) =週刊東洋経済2011年1月22日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら