フェイスブック 独走への次の一手
1月6日から米ラスベガスで開かれた世界最大規模の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」。毎年、ハイテク業界のトレンドを占うこの見本市で今年、訪れた人々の話題をさらったのがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブックだった。
会場近くの空港や出展企業など至る所でフェイスブックを利用した情報提供やマーケティングが行われていたからという理由だけではない。6日には米金融大手ゴールドマン・サックスと、ロシアのデジタルスカイが合わせて5億ドル出資(うち4億5000万ドルをゴールドマンが出資)することが明らかになったのだ。
ゴールドマンの試算によると、フェイスブックの時価総額は約500億ドルと未上場ながらそのポテンシャルは超弩級。会場を訪れていた米国のあるラジオ局社長はこの話を聞いて思わずこうつぶやいた。「フェイスブックは、グーグルに比べると単純な技術でできたSNSにすぎない。正しい時期に正しい場所にいたから王者になれたのだろうけど、何がそんなにすごいのか」。
圧倒的な集客力で広がる利用方法
フェイスブックは創業者のマーク・ザッカーバーグCEO(26)らが2004年、ハーバード大学在学中に始めたSNS。創業以来、利用者はうなぎ上りに増え続けており、現在では世界で5億人超。米ハイテク調査会社エクスペリアン・ヒットワイズによると、米国でのサイト訪問者数では昨年、ついにグーグルを抜いて首位に躍り出たもようだ。
前述のラジオ局社長の言葉どおり、フェイスブックには他社を脅かすような技術力があるわけではない。が、5億人という圧倒的な集客力をテコに、利用者側が新たな使い方を開拓。今や友人同士のコミュニケーションツールの枠を超え、「『おいしいピザ屋』を探すのに口コミを募るなど個人的に使うだけでなく、新たな広告キャンペーンの実験や人材採用など、企業でも無数の使い方ができる」(米セールスフォースのマーク・ベニオフCEO)サービスへと発展している。加えて、一部を除いて利用できるアプリケーションは第三者が開発・組み込めるようになっており、集客力を目当てに無数のアプリが集まってくる。こうした中から人気アプリが生まれ、利用者、ひいては広告主が集まるという好循環を築き上げている。
その勢いは数字にも表れている。今回、ゴールドマンが出資するに当たって顧客向けに作成した財務資料によると、フェイスブックの10年1~9月期の売上高は12億ドル、最終利益は3・5億ドルと、高収益企業であることが判明した。