がん免疫、抗体薬物複合体など新アプローチの治療薬が登場している。
長らく期待されていたがん新薬が、ついに登場した。第一三共が乳がん治療薬として日米で発売した、「エンハーツ」だ。
エンハーツが米国の規制当局から承認を得たのは2019年12月。通常の承認審査には約1年、短期間の承認審査でも半年はかかるところ、申請からわずか2カ月で承認にこぎ着けた。国内でも、およそ半年間の審査を経て20年5月に販売が開始された。
乳がんでは、およそ2割の患者でがん細胞にHER2(ハーツー)というタンパク質が過剰に発現している。そのため外科手術後の化学療法では、HER2陽性の場合、このタンパク質を狙い撃ちして結合できる分子標的薬(抗体)を用いた治療を行う。
今回承認されたエンハーツも、HER2陽性の乳がんが対象だ。臨床試験(治験)では、既存の標準治療薬である「カドサイラ」での治療歴がある患者にエンハーツを投与。60%の患者でがんの縮小効果が見られ、その効果は14.8カ月持続した。
こうして、治験で良好な成績を収めたことが、日米ともにスピード承認となった要因だ。既存の化学療法が効かない、もしくは効かなくなったHER2陽性の乳がん患者にとって、治療の選択肢が増えたことになる。
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