融資膨張の先に待つ「不良債権地獄」の恐怖 Part3 アフターコロナに待ち受ける時限爆弾

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
拡大
縮小

銀行は危機感を強めるが、備えは万全とはいいがたい。

19年度決算で多額の貸倒引当金を計上したふくおかFG(共同通信)

特集「銀行 地殻変動」の他の記事を読む

「現実にはありえない金額だ」。ある大手地銀の幹部は、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)の与信費用を見て、こう漏らした。

与信費用とは、不良債権の処理にかかる費用や、貸し倒れの発生に備えた引当金のこと。ふくおかFGは2019年度(20年3月期)決算で、福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行の傘下4行合わせて614億円もの与信費用を計上。これは、18年度の与信費用51億円の10倍以上の金額だ。

他の大手地銀と比較しても、その大きさは際立っている。横浜銀行を傘下に持つコンコルディア・FGの与信費用は約245億円。ふくおかFGの貸出残高が約16兆円、コンコルディア・FGが約13兆円であることを考慮しても、ふくおかFGの与信費用がいかに大きいかがわかる。

これだけ大きな与信費用の計上に踏み切ったのは、将来のリスクを大きく見積もっているからだ。614億円のうち、418億円は「フォワードルッキング」と呼ばれる新しい基準の貸倒引当金だ。景気のよかった直近の低い倒産実績を基に引き当てるのではなく、将来、景気後退が起きた際にどの程度倒産が発生するかを織り込んだ「予防的」な引き当てのことだ。つまりふくおかFGは、これから倒産がまだまだ増えるとみている。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
銀行 地殻変動
エピローグ
インタビュー/SBIホールディングス社長 北尾吉孝
金融庁が“宗旨変え"で接近
強豪も動き始める
全上場銀行業績を予測
小売り・サービスに多額融資
独自試算 最新決算で浮き彫りに
融資膨張の先に待つ「不良債権地獄」の恐怖
Part3 アフターコロナに待ち受ける時限爆弾
政府出資は時限的が理想
メガバンクトップに聞く/みずほフィナンシャルグループ 社長 坂井辰史
メガバンクトップに聞く/三井住友フィナンシャルグループ 社長 太田 純
三菱UFJを初めて抜いた
店舗とATMの削減が加速
Part2 メガにも押し寄せる地殻変動
インタビュー/三菱UFJ銀行頭取・全国銀行協会会長 三毛兼承
苦しい事業者に付け込む
「地域価値向上会社」を目指す
インタビュー/山口フィナンシャルグループ会長 吉村 猛
「疑似資本」のローンで復活促す
インタビュー/横浜銀行 頭取 大矢恭好
地元企業を支える地銀の覚悟
資本性ローン提供に加え、商社の役割も
地元に根を張る中小・零細企業を救え!
融資合戦の陰で進む
Part1 コロナがもたらす銀行の変貌
銀行 地殻変動
融資膨張の先に待つ「不良債権地獄」の恐怖
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内