岩崎家は、巨万の富を惜しげもなく貴重な文物の収集に使った。
「金持ちのままで死ぬのは不名誉な死である」「裕福な人はその富を浪費するよりも、社会がより豊かになるために使うべきだ」。鉄鋼業で巨万の富を築き、その富を図書館や大学の創設に注いだ米国の実業家、アンドリュー・カーネギー。その著書『富の福音』は、ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツの愛読書として知られている。三菱2代目社長の岩崎彌之助もまた、その精神に共感した一人である。三菱の社長を退任した後、欧米訪問中に本書と出合い、翌年には日本語翻訳版を出版させている。
社長引退後、古典籍や文化財の収集に熱を上げた彌之助。個人的な趣味もあっただろうが、単なる好事家としてではなく、カーネギーの思想にも通じる「実業家として蓄えた富を社会に還元したい」という志があったのだ。
お宝を収集した理由
三菱グループが運営する「静嘉堂(せいかどう)」と「東洋文庫」には、合計12点の国宝、31点の重要文化財を含む、書籍や美術品が収蔵されている。それらの多くを収集したのが、2代目・彌之助、3代目・久彌、4代目・小彌太の、岩崎家の当主たちである。
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