計量的な基準がないため、国税と富裕層に認識のズレも。
富裕層への課税強化が止まらない。2019年12月に発表された与党の税制改正大綱により、21年以降は富裕層の節税術がまた1つ封じられることになりそうだ。その方法とは、海外の中古不動産を購入し減価償却の仕組みを利用して納税額を減らすものだ。
中古物件の築年数が法定耐用年数を超過している場合、法定耐用年数の2割の期間で減価償却することが認められている。例えば築22年超の海外の木造住宅を購入した場合、購入費を木造の耐用年数の2割である4年間で償却できるため、多額の課税所得を短期間で減らすことが可能となる。
海外の不動産は資産価値が落ちにくく、4年の償却期間が経過した後も転売価格がそれほど下落しないという投資判断だ。比較的短期間で償却が取れる節税商品として富裕層に人気があったが、16年に会計監査院がこのスキームの問題点を指摘しており、封じられるのも時間の問題だとされていた。
富裕層への課税が強化され始めたのは15年7月に国外転出時課税制度が導入された頃からだ。海外移住する際に有価証券など対象資産を1億円以上保有している場合、含み益部分に対して譲渡所得税を課すことになった。海外に5000万円以上の資産を有する日本居住者が毎年税務署に申告しなければならない「国外財産調書制度」が14年に導入されたことや、海外移住者が相続税を免除されるまでの期間が5年から10年に延長されたことと合わせ、税率が低い国に移住しようとする富裕層への徴税包囲網が強化された。
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