アサヒビールが取り込んだ「なだ万」の旨味 日本料理の老舗は大企業に身を寄せた(下)

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アサヒビールの傘下でなだ万はどう変わるのか

現在、なだ万で代表権を持つ取締役は、創業家で社主兼社長の楠本正幸だけ。昨年12月、アサヒビールの傘下に入ったことで、今後、親会社から派遣される役員が代表取締役会長に就き、新たな経営体制が発足する予定だ。

アサヒビールでは、なだ万が培った和食のノウハウを取引先の外食店に提供していくという。ビール会社にとって家庭用のみならず、飲食店向けなどの業務用も重要な販売ルート。既存の取引先に加えて、新規開拓の提案営業にも活かす狙いだろう。また、「なだ万は海外に7店展開しており、(初出店から)33年が経つ。すべての店舗が黒字経営で、海外展開のノウハウも取引先に提供できる」(小路明善・アサヒビール社長)と言う。一連のノウハウ活用はもとより、1300人の従業員を抱える外食企業の経営をどう発展させるのか、手腕の問われるところだ。

 かつては株式上場も視野

なだ万にしてみれば、大企業の傘下に入ることで事業基盤の安定が図られるのは確かだが、独立独歩で事業を広げてきたこれまでとは違い、グループの一員として”親孝行”が求められるようになる。

前社長だった楠本純子の急逝を受けて、正幸がなだ万のトップに就いたのは1989年のこと。一度は代表取締役会長に退いたが、2010年には社長に復帰。老舗企業の顔として20年以上、陣頭指揮を執ってきた。

社長に就いた翌年の1990年、正幸は社内報で「日本の食文化の主要な担い手として、なだ万が世界に認められること」というコンセプトを打ち出している。具体的な方策に掲げた中には、「一般企業として充分認められる売上高と利益(将来の株式の上場)」があった。先々の上場も考えていた当時、アサヒビール傘下に入ることは考えてもいなかっただろう。

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