日本の天皇制を語るときには、2つに分けて議論すべきだと考えます。1つは日本国憲法から見た天皇制であり、もう1つは歴史的な文脈から見た天皇制です。現在の国の制度としての天皇制と歴史としての天皇制は区別して考えるべきであり、また歴史を見る場合には、学者による最新の研究を丁寧に追い、神話とファクトを見極めることが重要です。
まず、前者から見てみましょう。日本国憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と規定しています。これは、天皇のあり方は日本国民の総意に基づくものであることを明確に述べており、天皇制を考える際にはこれがすべてだといえます。「総意」とは、国民が「こうあってほしい」と願うことを意味します。天皇の地位は国民の総意によるものであって、今後の皇位継承なども国民が決めるということです。
例えば上皇が問題提起された生前退位は、皇室典範には書いてありません。でも、世論やメディアは上皇のご希望を圧倒的に支持しました。つまり、国民の総意が示されたのです。これを受けて、政府は法改正を行い生前退位を可能としました。皇室典範に書いていなくても憲法の示すとおり国民の総意で法改正はできるのです。皇室典範が作られたのは、日本人の平均寿命が50歳台のときです。現在のような少子高齢化は想定されておらず、時代に合っていない内容があるかもしれません。皇室典範は日本国憲法の下にあるので、「国民の総意」に従って不断に見直されるべきでしょう。
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